「幕末太陽傳」観劇感想1

【2017-06-28】
観劇感想

元となった映画も見ていないし、落語も詳しくはないのだけれど、様々な人々が入り乱れるこの作品。

けっこう楽しめました。

「三枚起請」のくだりは同じく落語を元にした「なみだ橋えがお橋」にも描かれてましたね。

次から次へとてんやわんやの揉め事がおこって、それを居残り佐平次のちぎちゃん(早霧せいな)が軽快に片付けていく。

一つ一つの揉め事はもう、ちぎっては投げちぎっては投げ!状態で結局のところ伏線でもなんでもなく、最終的に何の回収もつながりもないのがちょっと惜しいなぁ。と、思わぬでもないけれど。

とにかくちぎちゃんのテンポの良さが痛快なので、これはこれでいいのかな。

今回から雪組のまあやちゃん(真彩希帆)は大工の娘で女中のおひさちゃん。

健気な女の子~と思いきや、すごいしっかり者だし、いざとなればとんでもなく胆力がある。

これはきっと、後々NHKの朝ドラ「あさが来た」のヒロインのように明治の女傑実業家として名を成すに違いありません。

徳三郎さん(彩風咲奈)も朝ドラ同様、道楽ばかりのようにみえて、実はちゃんと妻を支える優しい旦那さんになるんだろうなぁ。

と思わせてくれました。

そして今回いちばんびっくりしたのが

はいちゃん(眞ノ宮るい)だ~~~~~!!!

前回の「Greatest Hits」で踊る姿に惚れた時は、まだお顔をはっきり覚えるところまでは至らなかったのですが、この通し役でしっかり認識できました。

若き長州藩士として出番も多く、そのうえ、とんでもなくキラキラしてたのだ!!

しかも男役として、武士としての形がこの学年にしてはきちんと出来ていて、おぉぉぉと感心した。

さすが雪組!

そう、特にときめいたのが千躰荒神祭。

組んだ娘役さんが芝居の上手いみちる(彩みちる)ということもあって、一連の踊りのなかでの二人のやり取りにドラマがある。

ただ振付をこなすだけではなく、時間とともに想いが次第に深まっていく様がその表情や動きのなかにしっかり表現されていて、とっても素敵でした。

途中、ちょっと見逃していた間に、はいちゃんの髪が乱れたのかな?

みちるがささっと髪を整えてくれたのに対して「ありがとう」と口を動かしたところがちょうど見えたの。

武士なので、本当なら「かたじけない」が正しい言葉なのかもしれないけれどね。

でも、役としてちゃんと武士らしく振る舞いながらも、とっさに優しく凛々しく「ありがとう」と感謝を伝える姿に、やたらドキドキしました。

「かたじけない」よりもずっと心の距離が近くてときめくなぁ~~。

みちるちゃんもさぞかしときめいたことだろうと想像してます。

高杉晋作、久坂玄瑞が早くに亡くなったことはよく知られていますが、この有吉熊次郎という青年も久坂と同じく禁門の変により23歳の若さで自害するのね。

もしかしたら余命宣告された佐平次よりも先に死んでしまうのかも。

千躰荒神祭は彼の短い生涯の中で最も心はずんだ美しいひとときだったのかもしれません。

そう思うと、あのキラキラ感ゆえにかえって切なさがつのるわ~~~。

たくましく生き抜く恋人達もいれば、まっしぐらに死に向かっている事をまだ知らない若者達もいる。

軽やかに走り回る佐平次のちぎちゃんが時折ふと見せる翳りのように、「幕末太陽傳」やたら楽しいコメディのふりして、実はなかなか多面的な作品なのかもしれません。

同じく落語を元にした「なみだ橋えがお橋」スカステ録画観賞記録はこちら。

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