観劇感想
諸般の事情により前日(というかもはや当日)あまり寝ることができず、その上お腹の調子が不良と最悪のコンディションで観劇日を迎えました。
こりゃぁ、もし芝居がつまんなかったら寝ちゃうかも~。(チケット代がもったいないので絶対に寝たくない!)と心配しましたが、全然大丈夫でした!
けっこう面白かったわ。
ちなみに原作本は読んだことないし宮本武蔵に関することはほぼ知りません。
巌流島で佐々木小次郎と決闘するのに遅刻した人。という程度のお寒い知識。
確かだいぶ前に大河ドラマでもやってたよね。
日曜の夜に海老蔵の眼力は強すぎて疲労度が高く1、2ヵ月で見るのを挫折した記憶。
ちなみに今年の大河「いだてん」はすっごい面白いんだけど、視聴率悪いらしいです。なんで?私の好みって変なのかなぁ。
さて月組の宮本武蔵。
まず、舞台装置が良かった!
國包洋子さん。よくお名前は見るので座付きの先生なのかな。
前面装飾のデフォルメされた波が大好き。
歌川国芳がモチーフ?それともやっぱり北斎かしら?モダンだわー。
無骨な木組みとか大木(書割だけどすごく立体的)がそびえ立っていて、舞台がぐるぐる回るとまた違う表情をみせるのもよかった。
背景に町家や寺社が太い影絵のようになっているのも版画みたいでいいわ。
物語はいろんなエピソードが次から次へと繰り広げられます。
特に、赤い照明に紙吹雪が舞う中での一乗寺下り松の決闘の場面が滾りました。
武蔵のたまきち(珠城りょう)70人切り。
聞こえるのは吉野太夫が掻き鳴らす琵琶の力強い音色と刀のぶつかり合う音のみ!
かっこよかった~。
全然知らなかったこの一乗寺下り松の決闘は盛り上がったけど、ちょっと知っている巌流島がクライマックスの割には意外にあっさり終わっちゃったかな。
もちろん男役といえども女性二人、大劇場の広い空間で迫力ある殺陣というのは難しいと思う。
かといってダンスシーンで表現するのもなんか違う気がするし。
小次郎は武蔵が同じ高みに追いついてくるのをこの巌流島の決闘までただひたすら待ち続けるという描かれ方なのでかなりの辛抱役だ。
それでもみやちゃん(美弥るりか)の静謐だけれど底知れない佇まいは独自の個性を持つ男役集大成にふさわしい素晴らしさだった。
もしもここまでに至る二人の軌跡を綿密な心理劇で描いてくれていたら〜。
みやちゃん卒業にもふさわしい緊迫した芝居になったかもしれないけど。
人数の多い大劇場公演でそれは難しいよね。
まぁ、物語としての起承転結的な構成はイマイチだったのかもしれません。
それでもいろんな人達が出てきて、それぞれに達者で人物像が面白く、どうなるんだろう?って飽きませんでした。
月組の芝居力!さすがです。
そんなこんなで物語終盤。
孤児の城太郎のゆいちゃん(結愛かれん)が武蔵の手紙をお通のさくさく(美園さくら)に渡すシーン。
ゆいちゃんの男の子役。うまいなぁ。
そういえば、ちょっと前に「グランドホテル」の新人公演をスカステの放送で見てゆいちゃんのフラムシェンがチャーミングでとっても良かったんだよね。
情のあるいい芝居をする人だ。
最初はお腹をすかせた無邪気なガキンチョだったのが、このラストシーンでは外見も精神も成長し少年を脱しかけている。
そして再び修行の旅に出る武蔵の手紙の真意をちゃんと理解できていて、それをお通に温かく真摯に伝えている。
ここでふと心が動かされたの。
突き詰めて、突き詰めて、登りきった!と思った瞬間にそこが頂上ではなかったことを知る苦しさ。
そんな武蔵の心情ってタカラジェンヌにもつながるよね。
なにかひとつ出来るようになっても、まだまだ先がある。
乗り越えても、乗り越えても終わりのない芸の道。
トップスターになってさえ、そこが終点ではない。
いやトップスターになればこそ、さらにさらに登らなければならない高みが見えてくるんだろうな。
ここから新たな、そしてゴールのない旅がまた始まるのね。
そんなことを思ったら銀橋を行くたまきちの真っ直ぐ前を見つめる眼差しにジ~ンときてしまって涙がひとすじ、何故だか右目だけから流れました。
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