観劇感想
芝居も佳作でしたが、なにせショーが素晴らしすぎて最高でした。
こういう大人っぽいジャズショーって久しぶりに観たわ。
シックなシャンパンゴールドが基調のオープニング。
娘役さんはジャズエイジを思わせるフラッパードレス。
といっても1920年代の狂騒のアメリカではなくて、ヨーロッパを感じさせる落ち着いた雰囲気のショーでした。
では印象深かったシーンを思いつくまま順不同で。
第4景 Le Cafe ~ジャンゴに捧ぐ~
その1920年代。ヨーロッパにはまだ第一次世界大戦の傷跡が残っています。
特にジャンゴの場面は三木先生がレマルクの小説がもととなった映画「西部戦線異状なし」からインスパイアされて作成されたとのこと。
レマルクは「凱旋門」の作者でもありますね。
この映画はラストシーンがとても有名で、あなたが選ぶ名画100選みたいなテレビ番組でそこだけを見たことがあります。
第一次世界大戦は塹壕戦。
戦況が膠着状態のある日、穴の中で身を潜めていた兵士が目の前に現れた蝶の行方にふと身体を伸ばした瞬間、敵に撃たれ死んでしまう。そんなシーンでした。
でも一兵卒の死など戦争中にはありふれたこと。
その日の戦場日誌にはただ「西部戦線異状なし」と書かれただけという結末だったかと。
このジャンゴのシーンは戦死した兵士のほうではなく、その時おそらくすぐ近くにいて、後に故郷に帰還した男のことが描かれているような気がします。
無事の帰還を喜ぶ恋人、カフェに集う懐かしい仲間たち。
再会の喜びの中にあっても悲惨な塹壕戦を体験したジャンゴ♪れいこさんはどこかしら上の空です。
戦争後遺症、今で言うところのPTSDで苦悩する彼を抱きしめる恋人♪うみちゃん。
ダンスのあと、白い蝶にふと手を伸ばすれいこさんの後ろ姿が切なかった。
今流れているニュースの背後には敵であろうが味方であろうが何名死亡という一言では書ききれない人生があったはずなのに …。
そんなことが頭をよぎるメッセージ性のあるシーンでした。
第6景 ミッドナイトイン巴里
宝石を巡ってれいこさん、ちなつさん、うみちゃんが駆け引きを繰り広げる場面も大人っぽくて素敵。
決め台詞が「アデュー」なので、ここも舞台はヨーロッパのようですね。
このシーンの振付は羽山紀代美先生。
振り数はけっして多くはないのだけれど、身体の使い方が美しく伸びやかでなければかっこよくならないので、キレキレパキパキのダンスよりもむしろ難易度が高いと思います。
もう、ちなつさんがさすがのかっこよさ。
あの抜け感とシャープさの緩急がたまらない。
うみちゃんもこういう謎めいた、そして一枚上手の美女ってすごく似合います。
そしてひとり残されたれいこさんの男の哀愁もかっこいい。
いいなぁ。一癖ある大人の洒落た三角関係。
第3景 Just a Gigolo
ちなつスキーの私にとって、ちなつさんメインで1シーンあるのも最高でした。
ジゴロのシーンは一瞬、え?俊藤再び登場?って思っちゃった。
このときの相手役がはーちゃん(晴音アキ)というのもちょっと意外だけど嬉しかったな。
メガネのお局風マネージャー?はーちゃんが美女に変身して踊ります。
プログラムによるとこのスレンダー美女は過去の姿なのかしら?
明るくってご機嫌なダンス。
壇上では箱推し106期生のプクくん(和真あさ乃)、まのんちゃん(花妃舞音)がさちかさん(白雪さち花)と一緒にのりのりでコーラスしてました。
最後はまたお局姿に戻って…。でもずっとそばにいてくれた君のこと、今も変わらず好きなんだよって感じです。
ひたすらハッピーなちなつさんも観ることが出来て私もハッピー。
第2景 No Rain, No Rainbow
そしてありちゃんメインでも1シーンあって、それが素晴らしかった。
流浪の民を思わせる男役だけのシリアスなナンバー。
これは痺れました。
ちょっとボレロのジョルジュ・ドンを思い起こさせるように男役が作ったサークルの真ん中でひとり踊るありちゃん。
ダンスも見事。
ありちゃんのダンスは宝塚男役の濃さとか大人の粋という面では少し物足りない気がしてたんだけれど、こういう高度なテクニックがメインの振付だとものすごく魅せます。
軸足ではないほうの片足をひざを曲げずにぴんと下方向に張ったままピルエットしたの、あれなんていうの?
バレエ用語があんまりわからないから説明できないんだけれど。(イタリアンフェッテとかではないです。)
横タンジュ?のまま、ほとんど開いていないコンパスみたいな形でくるくるくるって2,3回転するの。
フェッテみたいな大技ではないけれど、あんな高度なことさらっとこなすなんて、ありちゃんかっこいいわ~。
こういうさりげない振付が似合うようになってきたんだから、ありちゃんももう大人の男なのね。感慨深いなぁ。
もちろんショーの後半では、あなたいったい何回転したの~!っていうくらい凄いスピードでシェネしたり、そこからトリプルピルエットを2回くらい続けて回ったりと相変わらず元気にぐるぐる回ってました。
しかし、ものすごい運動量だ。
第5景 ザ・ヴォイス!
中詰の振付は名倉加代子先生。
なん十年以上も前から憧れの先生です。
なつめさん(大浦みずき)と名倉先生の振付の相性は抜群で数々の名ダンスシーンが生まれました。
お元気で今も振付をされていると知ってとても嬉しい。
中詰で歌われる曲は比較的耳馴染みのある素敵なジャズの曲が多くて楽しかった。
ありちゃんは「Night and Day」
「You! You! You!」と上手、下手、センターに指差しビームを受けた方々、ご無事でしたか?
私は2階席の奥でしたのでビームはくらいませんしたが、あれは威力がありましたね。
この時にありちゃんの横で踊るうーちゃん(英かおと)がかっこよかった!
そういえば第2景のノマドでも、第4景のカフェでもあの人かっこいい!って思ってオペラで確認すると100%うーちゃんだったっけ。
やっぱ私、うーちゃんのこと大好きなんだわ。
ちなつさんが歌うのは「Strangers in the Night」
これはルコさん(朝香じゅん)が「ザ・フラッシュ」の大階段で歌った曲だわ!
大好きだったこの思い出の曲をちなつさんが歌ってくれるなんて最高。
ちなつさんの甘く艷やかな声。
きゃぁ~~これは堪らない。うっとり!
そして「My Way」
昭和のOLだった私には、おじさんがスナックで熱唱するあんまりありがたくない曲と認識されておりますが、もちろんフランク・シナトラの名曲です。
よく知られた日本語歌詞ではなく、オリジナルの歌詞がつけられていました。
それをれいこさんを中心にして全員こちらを向いて力強く歌い上げる姿に涙が出てきちゃった。
すぐ泣く割には涙のツボが変なので「今夜、ロマンス劇場で」では泣かなかったのに~。
まさかショーで、しかもこの曲で泣くのか~。
「コーラスライン」の名曲「生きた日々に悔いはない(What I Did for Love)」をちょっと思わせる歌詞でした。
この数年の緊急事態宣言中には不要不急だなんてやり玉にあげられて大打撃をうけてきたエンタメ業界。
それでもその舞台を作り上げるために、どう生きるか、どう生きていきたいのかという熱い想いが感じられる歌詞で、思わず涙してしまった。
第7景 センテニアル・ムーン
月にちなんだ名曲を銀橋で歌いつないでいく第二の中詰?ここも楽しかった。
みちるちゃん(彩みちる)がひとりで銀橋で歌ってて感無量。
みちるちゃ~~~ん。黄色のドレスが似合ってる!とってもチャーミング。
ロケットではまたまた106期のプクくんに注目。
ありちゃんに最初に絡むのがプクくんです。
その後もピックアップメンバーでフェッテでぐるぐるまわってました。
歌がうまいことは文化祭のボーカルソロで知っていたけれど、ダンスもすごく動けるじゃないですか!
楽しそうに芝居したり、歌ったり、踊ったりするところ、つかさっち(飛龍つかさ)が下級生だった頃をなんとなく思い出させるわ。
フィナーレでは下手側Wトリオに入ってましたね。
歌に芝居にダンスに三拍子そろっていて、これからが楽しみ。
第8景 グランドフィナーレ
フィナーレがお洒落なラテンなのもいい!。
娘役さんのフリルが段々になったスパニッシュドレスって大好きなのよ。
そしてトリプルデュエットダンス。
こういうのって以前はよくありました。たしか「ザ・フラッシュ」もそうだったわ。
最近はトップコンビだけが踊る事がほとんどだし、ましてお披露目だからちょっとびっくりした人が多かったのかしら?
私は華やかで好きだけどな。
おだちん(風間柚乃)のド迫力エトワールも素晴らしかった。
声に迫力があるだけじゃなく、リズムもこなれた感じで心地よい。
そういうのなんていうの?
グルーブ?
やっぱり男役のかっこよさってダンスでも歌でもリズムが大きく関係していると思う。
たとえばオペラ界の人がジャズやポップスを歌うと音程や声の響きは見事なのに、どうもダサい感じになっちゃう事がよくあるじゃない。
クラシックはリズムっていうよりテンポの変化なのかな?
だからクラシックボーカルで発声を強化することも大切だけれど、さらにジャズを勉強すると、歌にも男役のかっこよさが出てくると思う。
おだちんはバウ公演「LOVE AND ALL THAT JAZZ」主演のため、きっとしっかりジャズに取り組んだんだろうな。
流石だわ。
出てくる人みんなそれぞれに良い声で、ソワレにぴったりな大人っぽいショー。
終演後に素敵なバーで余韻に浸りたいって感じです。
ま、時節柄それは出来ないので素直に直帰しましたけど。
でもお酒も飲んでいないのに、いい気分。
すっかり酔いしれました。
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