まぶしいぜ!青春群像劇「Sweet Little Rock'n'Roll」LIVE配信

【2022-01-26】
LIVE配信感想

なにせ初演を観ているものだから、色々と心配な事もあったのよ。

それに配信のテレビ鑑賞だとちょっとばかり冷静に見ちゃうところもあるしね。

だから脚本・演出に関しては30年以上もキャリアを積んだっつーのに、デビュー作からこの再演まで君は一体どれくらい成長したのかい?って中村暁先生に膝詰め談判したいくらいの気持ちはあります。

でもまぁ、そんなことはどーでもいいじゃん!

てな気分になるほど、若者たちはキラキラと輝き、今できる精一杯の力を発揮していたのが画面越しでも感じられて本当に楽しかったし感動しました。

よく笑ったし、ハッピーミュージカルなのになぜだかよく泣いた。

あー、同じ空間で同じ時を過ごしたかったなぁ。

でも配信を見ることが出来て、本当によかった。

上演できて、本当に良かった。

ビリー♪あがちん(縣千)

あがちん。初主演おめでとう!

これは今しか出来ない演目であり、びっくりするほどあがちんにピッタリの役だった。

自信たっぷりクールを気取っていてもどこかホンワリとした人の良さとか温かさが感じられる大型犬ビリーでした。

口ではなんのかんの言っても一番素直で単純な気がするわ。

今回は青春群像劇という雰囲気が初演よりも強く、そういう意味ではビリーだけが主役という作劇ではなかったような気がするのです。

それでもあがちんが出てくるとまるでドーンとかバーンとか効果音が聞こえてくるような勢いがあって、思わず目を奪われます。

未完成ならではのダイナミズムっていうのかしら。

歌は、まぁ色々と言われるではあろうけれど声自体はとても響いていて、そこがとっても魅力的。

私、音程よりも響き派なんですわ。

なので小手先の小細工なんかくそくらえって感じで、このままのスケールの大きさでまっすぐ進んでいって欲しい。

シンディー♪あやちゃん(夢白あや)

出てくる人間全員スットコドッコイなんですが、クールビューティーあやちゃんももれなくスットコドッコイなのには驚いたわ。

どんなにお高くとまってたとしてもそりゃ納得だよ!っていう美貌を持ちながら、それを感じさせない振り切った表情筋。

あがちんとの丁々発止もリズムよく、口跡よく、さすがです。

だからこそ、もっともっとがっつり台詞の応酬をしてほしかったのよ~。

気になるからこそ口出ししちゃうっていう乙女心がちゃんと描かれていればなぁ~。と脚本に文句をつけたくなるほどプンスカするあやちゃんは魅力的でした。

そしてもちろん、どの衣装も似合っていて眼福。

芝居中のサーキュラースカートも全部可愛かったけれど、一番好きなのはフィナーレ娘役ナンバーの赤い衣装かな。

ダンスはもちろん裾のさばきの美しさにうっとりしました。

ロバート♪あみちゃん(彩海せら)&メアリー♪メロディーちゃん(音彩唯)

いやもう、あみちゃん、知ってたけどすごい実力。

歌もただ単に上手いとかじゃなく、メアリーを思う恋心が芝居の歌として胸にしみる。

とにかくなにもかもダントツに上手くて1幕前半は完全にあみちゃんが舞台を引っ張っていた。

シンディーのモノマネもそっくりでね~。声とか口調とか完璧。

こういうところ本当に器用なのよ。

あまりに器用すぎて彼女自身の個性というものが見えにくく、そこがちょっと心配になるくらいだったんだけれど、組替えによる環境の変化はきっとまた一味違ったあみちゃんの魅力を引き出してくれるような気がします。

そして、メロディーちゃんは初演のりんりん(朝凪鈴)に横顔がそっくりでびっくりした。

ほっぺたの感じが似てたのかな?

ロバートが殴られたあとのセリフの言い回しもそっくりで(いや、初演をちゃんと覚えているわけじゃぁないんだけれど)りんりんの面影がぶわ~っと浮かんできちゃった。

正直この役、しどころがあるか?っていうとあんまりないような気もする。

とにかく王道ヒロインであること!それが大事で、そういう意味ではパーフェクトな可愛さでした。

ロッキー♪るいくん(眞ノ宮るい)&ミリー♪まるこちゃん(華純沙那)

この演目の振り分けが発表された時、るいくんがロッキーなのは間違いないとは思ったけれど、やっぱり少し複雑な気分でした。

だって、初演のロッキーは有望若手男役の紹介枠。

よくある3人組の一人でしかなくて出番は多くても彼自身の物語はなかったのだもの。

2幕のぐいぐいジョーが横恋慕するくだりって初演ではロバート&メアリーのエピソードだったんだよね。

一応、かなめちゃん(涼風真世)とカタちゃん(桐さと実)のダブル主演だったから、二番手のロバートの比重がそれなりに高かったのです。

それが今回るいくんのため、ロッキー役を三番手として膨らませてくれている。

これはむちゃくちゃ嬉しかったです。

それに応えたるいくん。

実は純情一直線なアホアホつっぱりヤンキーっぷりがもうかなり異彩を放っていて、だけどむちゃくちゃイケメンだったわ。

しかも2幕ではミリーとのキュンキュンが満載。

ちっちゃなまるこちゃん(華純沙那)が思いっきり背伸びをしてるいくんに抱きつくのがたまらなくキュート。

あの身長差。たまらん。Littleまるこちゃん可愛すぎる。

千秋楽、ロッキーのプロポーズはアドリブなのね?

1幕ではあんなにイカれたアホ兄ちゃんだったのに最後はすっかり甘々のSweetロッキー。

るいくんの声には独特の甘み成分があるので恋人がいる役をいっぱいやってほしいなぁ。

あ、もちろん北尾のように一方的に甘い言葉を発するのもよいわよ。

そしてフィナーレで踊るるい君はひたすらかっこよかった。

毎回同じこと言ってる気がしますが見惚れました。

特に燕尾の美しさ。

氷のように澄み切った佇まいに独自の燕尾の美学を感じたわ。

フレディ♪まなはる(真那春人)&マクリーン♪あいさん(愛すみれ)

中村先生の演出に真面目に従っていては芝居は全然面白くならないって思っているのよね。っていう話はこちら↓

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バウ・シェイクスピア特集・雑感

というわけで、おそらく全く従ってはいなかったであろうお二人。

もう自由に、好き勝手に、やりたい放題に演じて、そしてやっぱりさすがでした。

ぐいぐいジョー♪つーちゃん(天月翼)&スタージョン♪あっさん(麻斗海伶)

今回ちょっと割をくっちゃったのが、ぐいぐいジョーかな。

初演のありんこさん(葵美哉)は、表情も衣装もまるでデスノートの死神のようだった記憶があるのですが。

もちろんデスノートの発表前だから私の記憶違いかもしれないけれど。

とにかく観終わったあとにはもう、ぐいぐいジョーのことしか覚えていないくらいの衝撃でしたっけ。

とはいえ出番はソロ歌唱ありの1シーンだけ。

出落ち以外の何者でもない役なのでインパクトが第一なんだよね。

今回、ロッキーがかなり攻めたリーゼントのおバカでチンピラな役作りだったため、ぐいぐいジョーと持ち味がかぶってその印象が薄れてしまったのかも。

ぐいぐいジョーの衣装、割と普通のロカビリースタイルだったものね。

せっかくのエルビス・プレスリーかぶれという設定なのだから、もっと袖のフリンジをプレスリーのステージ衣装と同じくらい長~くしても良かったんじゃない?

それから手下のあっさんはなんとつーちゃんよりも更に背が高くて、役作り的にもぐいぐいジョーを上から見るような雰囲気が出ていましたっけ。

ニヒルでとってもかっこよかったんだけれど、じゃぁ何でぐいぐいジョーの言いなりなんだろうって疑問が。

この芝居で最上級のおバカキャラ二人組という構図がちょっと崩れちゃったのは新演出っていうことだったのかなぁ。

フィナーレそしてカーテンコール

さて、15年ぶりくらいに宝塚観劇を復活させて驚いたことは色々あったけれど、その中のひとつが中村暁先生がいまやショー作家として活躍されているということ。

バウデビュー以来、芝居のダンスシーンではいつも全員正面を向いたまま、その場でポップコーンステップばかり踊らせていた印象だったのに、まさかショー作家になっているとは思いもしませんでした。

調べてみたら1994年の「サジタリウス」でショー作家デビューしているみたい。あぁ、あれか~。

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みきちゃん(真矢みき)の「ハイペリオン」も中村先生だったんだ。あらま、これ見てるわ。

サトル先生も進化を遂げていたということなのね。すみません。成長がないだなんて文句言っちゃって。

そんなわけで、今回の再演に際してショー形式のフィナーレナンバーをつけてくれたこと、とっても感謝、感激しております。

ラップ入りバキバキのK-POPもかっこよかったし、あみちゃん歌唱から娘役群舞。燕尾。そしてデュエットダンス。というオーソドックスな流れがちゃんとあったことは嬉しかった。

若手ばかりの作品で基礎がきっちりしたクラシカルな燕尾を踊れるなんて素晴らしい。

みんなどんなに嬉しかったことだろうって想像すると、もうこのあたりで涙涙でしたよ。

中継のカメラさんも割と引きの映像でとらえてくれていて、最下級生に至るまで映っていたのが嬉しかったな。

そしてカーテンコール。

あがちんのご挨拶は真っ直ぐな気持ちが自分の言葉で語られていて見ててとても気持ちが良かった。

今日の一言のあやちゃんは卒のないご挨拶だったね。

もうちょっと裏話的なことが聴きたかったけど、生配信だから難しいか。

そして次はあみちゃん、という時にどうもサプライズだったようです。

サトル先生の演出で、それぞれが劇中のセリフをあみちゃんに語りかけるという流れ。

あみちゃんも、びっくり。そして涙がこみ上げて顔がゆがんじゃいました。

突然のことであみちゃんはセリフを切り返せたり、返しようがなくって中途半端になったりと、サトル先生のシナリオのツメの甘さは感じるものの温かいプレゼントでした。

ラストは、NEW FIREから今回のダンスへと受け継がれた裏ピースからのビクトリーポーズで締め。

バッチリ決まった!っていう瞬間にあがちんが泣き崩れるというおまけ付きで、爆笑と涙涙のカーテンコールとなりました。

そうだよね。とんでもなく大変な時期に初主演で、どれだけ背負っていたものがあったんだろう。

ようやく緊張が解け、感極まったのね。

もう、まさにこれぞ青春ど真ん中。

若い頃に観た初演ではまったく胸に刺さらなかったのに、こんんなおばちゃんになってから見たら若者たちがひたむきで眩しくって感動しちゃった。

ほんと、いいもん見ました。

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