女たちと無双の男「柳生忍法帖」1

【2021-12-19】
観劇感想

星組の観劇はなんと「食聖」以来です。

ようやく、ようやく!こっちゃん(礼真琴)の生歌を劇場で全身に浴びる事が出来ました。

おウチで配信見るのとは桁違いに凄かった!お腹に響いたわ。

無双の男柳生十兵衛♪こっちゃん(礼真琴)

しかしあれ程の高速の殺陣をこなした上で息も切らさずどこまでも伸びやかに歌い上げるこっちゃん。

天才です。
大谷翔平か藤井聡太か礼真琴かっていう感じです。

もちろんその陰にはものすごい努力が隠されているのではあろうけれど、観客の目に触れるのはひたすら余裕のこっちゃん。

それはこっちゃん自身が余裕っていうだけじゃなく十兵衛という人間の余裕を表す事にもなるのよね。

どんな敵と対峙したって、少なくとも一対一なら絶対負けるわけがない天才剣士。

でも柳生宗矩パパ♪カブちゃん(朝水りょう)にはどこか頭が上がらなくて逃げちゃうとこ、可愛いな。

まだ乱世の余韻が残る江戸初期の時代に十兵衛が軽口叩きながら飄々と生きていけるのもその凄腕があればこそ。

もしも千姫が十兵衛だけに仇討ちの実行を依頼したとしたら、なんのスリルもなく、ものの10分程で片付いちゃうところだったわ。

女忠臣蔵か七人の女侍か

けれどこの芝居の面白いところは、あくまでも仇討ちをするのが女達であること。

さながら襲い来るスズメバチに立ち向かうミツバチのように集団の力で七本槍の悪人共をひとりずつ打ち倒していく女達に手に汗にぎりました。

会津に向かう女たちが銀橋にずらりと並んだシーンでは胸にグッときて涙が浮かんでしまいましたよ。

もっとも全員僧形で笠を深く被っているから2階席からでは誰が誰やら全然分からなかったけれど。

女たちで比較的見せ場があったのがはるこ様(音波みのり)、ほのかちゃん(小桜ほのか)、さきちゃん(澪乃桜季)かしら。

一人一人の見せ場は決して多くはないけれども、とにかく全員の力で討ち果たす。

女忠臣蔵か七人の女侍かという趣きでした。

千姫♪なっちゃん(白妙なつ)が大石蔵之介か志村喬ですね。

なっちゃんがとにかく深くてカッコよくて見せ場も多い。口跡がすごく気持ちいい!

これが宝塚でなかったら、そして剣豪小説でなかったら、千姫が主役だわ。

哀しき女ゆら♪なこちゃん(舞空瞳)

というわけで敵側のゆらの物語的な見せ場があんまりなかったような〜。

もちろん、なこちゃんは美しくそして妖しい雰囲気を醸し出していました。

柳生十兵衛に愛を告げるところはてっきり色仕掛けの作戦だと思って見てましたよ。

これから二人のどんな攻防があるんだろうとドキドキしてたらなんと本気の恋だったんですね。

展開的にはやや唐突感はあったけれど半分くらい妖怪に足を突っ込んでいながら心の中では揺れる想いがあったんだろうなぁ。

十兵衛が最後につぶやいた

俺だけが弔ってやれる女がいる

という独白はゆらに対する恋情というよりも動乱の世に散った数多の命の弔いの意味合いだったように感じました。

ダークサイドの人間はとりわけ、滅びてしまえば偲ぶ人など誰もいないもの。

勧善懲悪の痛快時代劇ではあっても最後に余韻が残って素敵だったわ。

バチバチ対決はお預け

だけど欲を言えばもっと、ことなこバチバチ!って展開を見てみたかった。せっかく女たちが活躍する話だったのに〜。

二人のクライマックスに挑みかかるようなダンスがあったら、このトップコンビならではの凄い見せ場となると思うんだが。

いやまぁあの衣装では踊れないけど。

でもこの先そんな作品を見てみたいです。

ただそういうのって男役優先、特にこれから益々こっちゃん無双の星組ではなかなか難しいのかも。

とはいえ舞台は思った以上に楽しめました!

やっぱり生観劇の迫力はたとえ2階の後方席であろうと格別です。

そしてね。
なんといっても悪役フェチとしてはこの芝居滾らないわけないのですよ。

というわけで、悪役軍団についてはとっても長くなりそうなのでまた次回に!

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