LIVE配信感想
そういえば以前、この劇的な物語の上にさらに舞台ならではのジャンプが生まれたら上田久美子先生の作品は無敵になる。みたいなことを書いたことがありましたっけ。
【関連記事はこちら】
>>> 三島由紀夫の肉声テープに上田久美子先生の行く末を思う「金色の砂漠」2
なんと!今回の「FLYING SAPA」にはそういうジャンプが生まれていました。
そうそう!こういうのが好きなの!
映画や小説なら細やかに描写され埋めらるであろう経緯とか場面のテイストとかが程よくぶっ飛ぶのが舞台ならではの面白さ。
好きなところは色々あったんだけどなにぶん一度きりの鑑賞なんで覚えているところだけ取り急ぎメモっておきます。
スポークスマンのしどりゅー(紫藤りゅう)とせとぅー(瀬戸花まり)がサパに取り残された遭難者の救助が始まったとか言う場面。
報道が正しいと信じて伝えている事がいつも真実…とは限らない。
そしてしどりゅーのあまりにもニュートラルな笑顔が逆に怖いわ。
人格に裏があるわけではないのに、なにかが微かに嘘っぽいスポークスマンぶりに心がザワザワする。
そんな無機質な場面からヘソを目指して旅を続けるサパの面々のちょっとコミカルなミュージカルシーンへのジャンプ。
しかも使用曲は古い地球の楽しい童謡。ピクニックだったっけ?
リアルに描けば過酷な旅のはずなのになぜだかめっちゃ楽しい場面。
もうみんな自分勝手で個性爆発!
そうだよね。
人間だもの。みんな違ってみんないい。
困ったことも多いけど、めんどくさいからこそ、そこから生まれてくるものが愛しい。
暗く重苦しい芝居の中でわちゃわちゃと楽しい場面へテイストがジャンプする展開がすごく好きなのです。
もう一つ好きなジャンプ。
サパの面々、追手に追いつかれて戦闘状態になるわけですがシーンが変わるといきなり時間が経過していて既に仲間は散り散りになっている事が示される。
何が起こってバラバラになってしまったのかは描かれていない。
もしこれが映画とか小説だったらきっとその経緯が描写される事でしょう。
でもこれは舞台。
敢えて経緯を描くことなく時間と状況をジャンプさせることで、観客はいきなり問答無用の緊迫の只中に連れていかれる。
この余白とスピード感がすごく好き!
こうしたジャンプからふと思ったんだけど舞台って俳句と似ていると思うの。
かけ離れている場面にベーンとジャンプさせる事って、一見無関係のようにも見える季語と取り合わせる俳句の妙に似ている。
見せる事が出来る世界に制限があるからこそ、観客の想像が無限に広がる。
だからこういう舞台ならではのジャンプがあるとすごく嬉しいのよ。
- 緻密で理知的な構成
- 練り上げられた言葉
- 役者の個性を引き出すアテガキ
そしてついに
- 舞台ならではの飛躍!
上田先生、カードを揃えたわ!
次回作「fff」が本当に楽しみ!
コメント