想いつれづれ
観劇するまで初演の記憶はほとんど残ってないって思ってたけれど、いざ舞台を観てみると意外に思い出されてくるものなのですね。
特にデイジー♪みきこちゃん(鮎ゆうき)のことが色々蘇ってきました。
もちろんどちらがいいとか悪いとか比べる意図ではないのですが、技術の面で言えば歌も演技も初演デイジーのほうがずっと拙かったと思うのです。
だってみきこちゃんがトップ娘役に抜擢されたのは研4、しかも娘役転向後たった1年程でした。それゆえ芝居のキャリアが浅く、しかもはったりも効かないタイプ。歌もかなり苦手だったな。
だから就任当初は相手役のカリンチョ(杜けあき)に必死でついていってたけれど、そのあまりの実力差ゆえ、時には舞台上で自信なさげに見えちゃうことすらあった。
そんなわけで本来は大人っぽい美貌の人なのにも関わらず、他愛のない物語の可愛いお嬢さん役ばかりを当てられていたような気がします。
ベルばらはロザリーね。マリー・アントワネットは二番手娘役で芝居の上手いニナちゃん(仁科有理)だったわ。
でもそれもしょうがないと思えるくらいまだ色んな意味で幼かったのよ。
そして研7。まだ研7だったのか!
自身の卒業公演にして最大、と言うか一世一代の当たり役がこのデイジーだったんです。
それまでの不安定さをまだ少しチラつかせながらも、ようやく胸のつかえというか肩の荷がおりたのか、なにかが吹っ切れたような凄まじいオーラを放っていた記憶があります。
誰もがひれ伏さずにはいられないほどゴージャスな美女だけど、どこか幼女めいた虚ろさがあって、気まぐれな王女のように高慢に見えるのに、なぜか自己肯定感が低い。
彼女の醸し出す何とも言えないアンバランス感がまさしくデイジーそのものだった。
それはもう技術云々、芝居云々の問題じゃなかったんだわ。
私にとってデイジーと言えばみきこちゃん。みきこちゃんといえばデイジーだったのです。
でも、もしもギャツビーが二幕物だったとしたら、あの時のみきこちゃんにはその細やかな心理の流れはとてもこなせなかっただろうなぁとも思うわ。
うみちゃん(海乃美月)は二幕の時間をかけて、なにかがゆっくりと壊れていくような感じのデイジーでした。
けっして満たされることのない激しい渇きを心の奥に抱えた人。
もしもギャツビーと共に生きる事になったとしても、その渇きは永遠に満たされないんじゃないかしらってふと思った。
初演には無い綺麗なお馬鹿さんになってやるソングの鬼気迫る表現にも圧倒されました。
みきこちゃんが一幕物なればこその煌めきだったように、再演二幕物なればこその緻密さで繊細に紡ぎ上げたうみちゃん。
座付き演出家ならではアテガキと演者の表現によって全く違うデイジーが興味深かったです。
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