LIVE配信いろいろ1「ELPIDIO」

【2022-11-26】
LIVE配信感想

去年から今年にかけていくつかLIVE配信を見たにも関わらずすっかり記録をおろそかにしてしまった。

もう見た瞬間から記憶の彼方ではあるけれど数カ月後には見たことすら忘れてしまうような脳みその容量なのでなにがしか書き留めて置かなければいけなかったわ。

「ELPIDIO(エルピディイオ)」~希望という名の男~

直前に腰を痛めてしまったために座ることが出来ず、ベッドで寝ながら見るという情けない状況だったためでしょうか、けっして悪くない作品だと思うのだけれど気持ちが乗りそこねてしまった。

まず冒頭あたりに「バルセロナでなんとかかんとか(ちゃんと覚えてない)」っていうようなセリフがあったので、うっかり「NEVER SAY GOODBYE」と同時代くらいなのかしら?って勘違いしてしまったのよね。

あれれ?バルセロナでは共和国って言ってたのにマドリードはまだ王政?カタルーニャ地方って異質だから当時のスペインって分裂してたのかしら~?などと世界史の記憶もあやふやなので混乱しちゃった。

後で作品解説を読んでみたらネバセイよりも前の時代だったようです。

バルセロナで起こった暴動というのは1909年の「悲劇の一週間」。スペイン軍とカタルーニャの労働者たちが衝突した事件だそうで。

いや、そんなん知らんがな。

ヅカオタゆえにしょっぱなから迷子になっちゃったよ。あの「バルセロナで~」っていうセリフ、どうしても必要だった?

忘れそうなのでここでちょっと世界史覚書。

この物語の結末の数年後、1914年(宝塚歌劇団誕生の年)に第一次世界大戦が勃発。

中立策をとったスペイン王国は軍需産業が繁栄してブルジョワジーは潤い、労働者の暮らしはさらに悪化して格差はますます進むらしい。

エルピディイオ♪ちなつさん(鳳月杏)は時の軍隊の権力者とそっくりだったのをいいことに、ちゃっかり資金も妻も手に入れてハッピーエンド。植民地生まれの一介の詩人がなんとブルジョワジーとなったわけですな。

ジャーナリストさちか姐さん(白雪さち花)の頑張りが実を結んだのはそこから20年も後。

第二共和政時代の1933年についに女性が参政権を獲得。

しかしその女性票が保守に流れて共和派は敗退、右翼が勝利し3年後には泥沼の内戦に突入。ここがネバセイの時代だったのね。

そして勝利したフランコ将軍によって女性の参政権は奪われる。というわけか~。

女性の選挙権の回復は、フランコの死後の1977年。ってつい最近じゃない!リアルに生きてる時間軸だわ。

さてさて、こんな動乱の時代の前夜でありながらラストはめでたしめでたしの物語。

そういうのって具体的な国や時代背景を明確にせず、「スペインのような国」になっていたほうがもっと気持ちがスッキリしたんじゃないかなぁ。

ちょいちょい挟まれる当時のリアルな社会背景の説明が芝居に没入するのに少し邪魔をしたかも。

たとえば正塚作品「マリポーサの花」や「二人だけの戦場」は明らかにキューバ革命やユーゴスラビア紛争を下敷きにはしているけれど、具体的に国名の特定がないところが好きなのよ。

そのほうが歴史的事実にとらわれず登場人物の感情だけに乗っていける。結末の痛快さも生きてくるような気がするのだけれど。

もっとも冒頭のバストン(杖)を使ったスパニッシュダンスはむちゃくちゃかっこよかったし、タブラオで歌われるスペイン各地の料理自慢は美味しそうだったし…。

やっぱ国や時代を特定しないで描くなんて無理か~。

それに作演出の謝珠栄先生はそういう政治的なことこそを楽しいエンターテイメントの中に潜めたかったのかもしれない。とふと思いました。

今の世の中にどこか大戦前夜と通じるような危機感を感じ取られていらっしゃるのかも。

この先の道をもしも間違えればこうして楽しく観劇などできない世の中になってしまう。いや悲しいことにもうすでにそうなっていしまっている国はいくらでもある。

あぁ、この物語の愉快な人々はこの後の激動の時代にどうなったんだろうか。そして今、この世界の行く末は?などとちょっぴり考えて落ち込んでしまった。

とはいえ、ちなつさんは素敵だし、みちるちゃん(彩みちる)は大人可愛いし、れんこんさん(蓮つかさ)は愛おしいし、まゆぽん(輝月ゆうま)はさすがでした。

ちなつさんとみちるちゃんのデュエット曲が特に好きだったわ。転調がある曲って好きなの。

まゆぽんの詩の朗読が歌になっていくのも素晴らしかった。

この2曲は音楽配信になったらダウンロードしたい!

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