観劇感想
これまで再演物ばかり。
唯一のオリジナルは特に誰に当てはめたわけでもない台湾公演に向けての捨て作品。
大石静の脚本(おそらく最初にボツになってたやつ)だったからこれがみりお(明日海りお)率いる花組にとって初めてのアテガキ作品。
アテガキこそ宝塚の生命だと思うもの。
自意識過剰な美少年の奴隷とか。
これでしょ~。
これが皆が観たかったみりおちゃんでしょ~~~。
それから気性の激しい第一王女。かのちゃん(花乃まりあ)
高慢で、たとえ泥にまみれたとしても高い、手の届かない女。
こういう一見、嫌な女のヒロインであっても、その背後にある脆さとともに美しく気高く演じられるのが宝塚娘役の真骨頂だと思うわ。
砂漠の中に大地の優しさをもたらす奴隷。キキちゃん(芹香斗亜)
単なる語り手だけではなく人の心の繊細なゆらぎを演じて、もう、この青年の登場シーンは最初から最後まで静かに静かに涙が流れてしまいました。
キキちゃんの品の良さと賢さがなければ成り立たない役。
そして、これを身につければもっと素敵になるのに!と思っていた憂いのベールが、ついに!ついに!キキちゃんにおりてきました。
なので春の柔らかさを感じさせる第二王女のべーちゃん(桜咲彩花)との並びも温かくそしてとっても切ない。
お互いに深く愛し合いながらも、結ばれることを自ら禁じたこの二人は、考えようによっては、一番つらい恋…だよねぇ(涙)
それから「鳥を驚かすのが忍びなくて窓が開けられないから汗だく。でも痩せない。」と語る、たそ(天真みちる)も心にしみました。
こんなネタみたいな変な話だけれど本当のことを誠実に話しているんだろうな~~。
と思わず納得させられる演技。
言っていることが嘘に聞こえたらあの役はオシマイだもん。上手いわ~。
砂漠の論理とは別のところにいるガリア人の求婚者。カレー(柚香光)
いずれは跡継ぎに…と言えば聞こえがいいけど、人質としてこの国に置いているっていう部分もあるわよね。
王がいなくなり、この国に価値もなくなればとっとと逃げるのは当然。
正直、この人の歌も相当なものだけれど、それ以上に危ういのがその演技力。
うっかりすれば芝居を台無しにしかねないのだけど異分子とも言える役をあてて、なんとか乗り切らせた。
噛み合わない会話、情のない空疎なセリフ、酷薄な美貌。
全てがこの役にピッタリ。
第三王女に振り回される単細胞の奴隷はあきら(瀬戸かずや)
この人の持つ軽快さ、裏のなさが上手くハマってる。
同じ身分だと思っていた奴隷仲間が実は・・・・なのだが。
この人一人、ちゃんと庶民(しかもちょっぴり小物)なのだ。
熱くて軽くて憎めないヤツ。いい味でてるなぁ~。
偉大な砂漠の王ちなつ(鳳月杏)
物語全てがこの人に収斂されている扇のかなめとも言える役。
素晴らしい!!!
美丈夫!!!
かっこいい!!!
崩れゆく姿も神々しい!!!
王妃のゆきちゃん(仙名彩世)と二人、大人の宿業の悲劇!
そして忘れてならないのが王の奴隷を演じたまりちゃん(鞠花ゆめ)。
けっして、いらない動きはしないのよね。
芝居で動かないって、きっと難しいよね~~。
ついなんか小芝居しちゃうでしょ。
いや動かないどころか、まるで砂や土のように…気配すら消しているぞ!
だけど、ここぞ!という時には、いつの間にか、そこにいる!
彼女を見ていると、あの特別な奴隷というものは単なる王の奴隷とか召使ではなく、王の半身なのかもしれない。と思えてきた。
盗賊のじゅりあ様(花野じゅりあ)かっこいい!!(おもわず様付け)
美しく強い鉄の女。うん。ピッタリ!
その他にも
なんか、も~、胡散臭い大臣らいらい(夕霧らい)とか。
ひげと甲冑似合い過ぎのびっく(羽立光来)とか。
このところ穏やかな役が多かったので油断していたら、まさかの衝撃!さおたさん(高翔みず希)とか。
にしても、子供って残酷。きっとこの頃からこの子達、自分たち二人以外の人間なんて必要なかったんだろうな~。
ラスト、砂漠に二人だけ…というのは、当然の帰結だったのね。
とにかく全てが座付作者ならではの配役と人物造形で本当に見ごたえがありました。
同時上演の日本物、宝塚舞踊詩「雪華抄」も素晴らしかった。
原田先生はセンスがいいよな~。
そして、まいてぃ(水美舞斗)が震えるほど美しかった~~~!!!
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