観劇感想
楽しかったー。
夢介さんはまぁ~~次から次へと厄介事に巻き込まれるのですが、観ててキリキリと緊張することはなく、かといって飽きることもなく、ほっこりニヤニヤ楽しい観劇でした。
江戸の町人物って大好きなんです。
芝居とともに衣装もたっぷりと楽しみました。
夢介♪さきちゃん(彩風咲奈)の股旅姿と着流し
冒頭の股旅姿。
足ながっ!!ってどんな衣装でも毎回新鮮に驚く。
ぺたんこなわらじ履きでもこの長さ。
もっともこれだけ足が長くてお顔がちっちゃいとね。着流しになったら首から下がとっても長くて~。
子供の頃、ほぼ毎日時代劇を見てたおばちゃんの目から見たらバランスがおかしいといえばそうなのだ。
でも帯に挟んだ腰の手ぬぐいが色的にも全体のバランス的にも、とてもいいアクセントになっています。
臙脂色の手ぬぐいの柄はメダカかな?
後半の紫色の手ぬぐいの柄は茄子のよう。
どちらもすごく可愛い。あれ欲しい!
しかも時代劇ではちょっと見慣れぬその十頭身が夢介さんの人となりも表しているように思えます。
日だまりのように温かな物の見方とおとぎ話みたいに愛他的な行動が周りからヒョロっと飛び出た姿によってより説得力を増す。
眉と目の間を少し広げたさきちゃんの表情もおっとりとチャーミングです。
見かけは可愛いけど百戦錬磨のお銀さんに動じもしなければ色目も使わない夢さん。
肝の座りっぷり、ダダ物じゃぁない。
終盤の蕎麦屋のくだりでは一転キリッと腰を落として。
おぉぉぉそう来るのか!かっこいぃぃぃぃぃ!
お銀さん♪きわちゃん(朝月希和)の紺地に雪輪
そんな夢さんに岡惚れのお銀さん。
冒頭の旅姿はいかにも鉄火肌の姐御って感じですが、江戸に家を借りて女房気取りになった時の所作がはんなりと色っぽい。
この場面でお銀さんが着ていた紺色にピンクの八掛の着物が大好き。
紺色の着物の袖口や裾周りにすっと細くピンク色が覗くのがすごく愛らしいわ。
お銀さんの心根のいじらしさが着物にも現れているようです。
しかも着物の柄が雪を図案化した雪輪文様なんだよね。
そういうところ宝塚の衣装部さんのこだわりと心意気なのよ。
伊勢屋の婚礼ではとっても豪華な着物と帯なんだけれど(なにせ夢さん大金持ち)、帯結びがちゃんと角出しなのもグッドです。
江戸時代の町人文化を描くなら女性の帯結びは角出しじゃなくっちゃ!
総太郎♪あーさ(朝美絢)の二枚襲ね
伊勢屋の放蕩息子は顔も良ければ着物も良い。
江戸好みなので色合い的にはそれほど華美には見えないけれど、どうも着物を二枚重ねてるよう。
半衿と上の着物の間に中着の臙脂の色が映えてとってもおしゃれです。
襦袢の上に着物を二枚襲ね(かさね)。
全部裏付きの袷(あわせ)だとしたら、絹が計6枚にもなるのか。
これはなかなかの贅沢。
その上、羽織も引っ掛けてるし。
ぬくぬくのお坊ちゃまですね。
現代だと伊達衿に簡略化していますが本来はこうやって着物自体を襲ねるのね。
もっとも衣装だから本当に二枚の着物を着ているわけではないのでしょうが。比翼仕立てなのかしら?
それでも袖口や裾に二枚分の重みが生まれて所作が大変だと思う。
でもそこはさすが雪組。
あーさのしなしなと腰を落とした動きがとっても艶っぽい。なのに滑稽でもある。
お布団かぶってむくれていても、なんせこの顔、この目ヂカラ。
眼福でした。
三太♪そらくん(和希そら)の子持ち弁慶格子
新調した三太の着物は太い格子に細い縞が並んでいる子持ち弁慶格子。
お鶴♪ブーケちゃん(花束ゆめ)と亀吉♪りなくるちゃん(莉奈くるみ)は色違いの弁慶格子。
チェック模様が三人並んでほのぼのと愛らしい。
親代わりに妹と弟を養っているんだもんね。
あ、だから子持ち弁慶?
このところレストレード警部とか不倫部長ジェルドレイクとか、がっつり大人を演じてきたそらくんが久しぶりの少年。
たとえスリでも少年でも、出来る男の片鱗が感じられるのが和希そらの個性かな。
はしっこくて抜け目なくって生き抜くエネルギーが強い。
そしてさすがの間の良さと声の良さです。
次作は「心中・恋の大和路」
この物語はラストの雪山の印象が強烈だからつい忘れがちなんだけれど、前半部分はしょーもない突っ転ばしの若旦那の放蕩ぶりが割りとコミカルに描かれているんだよね。
そのダメ男のヤワヤワをどう演じて、どう封印切や新口村の芝居に持っていくか。
新たな挑戦、楽しみだなぁ。
チケットは手に入らないだろうけれど、配信は絶対見る!
悪七♪あやなちゃん(綾凰華)の斧琴菊
ほとんどが縞柄の着物なんだけれど、美人局の場面だけ斧琴菊紋様なのだ。
これは三代目尾上菊五郎愛用の役者紋で「良き事聞く」という語呂合わせなんだとか。
吉祥文様として縁起を担ぐのが好きな江戸っ子に愛されたということで、卒業後もあやなちゃんの良いことをいっぱい聞けますように。
そしてこの斧琴菊があやなちゃんにとても似合っていた。
花柄がまざっているので縞よりも雰囲気が柔らか。
総髪にはらりと顔にかかったシケがまたまた色っぽくって。
このシーンのあやなちゃんにすっごくドキドキしました。
そして伊勢屋のくだり。
ここね。泣いちゃったのよ。コメディーなのにうるうる。
あんな風に目をキラキラ潤ませて必死にお滝さんへの愛を叫ばれたらもう泣くしかないじゃん。
あやなちゃんの芝居って心にしみる。
なんていうか、愛の人なんだなって思う。
あでやか!芸者衆
江戸の芸者なのでお座敷の場面の帯はお太鼓系の柳結び。
ずらりと並んだその姿は壮観です。
みんな違うお召し物でそれぞれ全部見たかったわ。
浜次♪ゆきのちゃん(妃華ゆきの)
縞柄に文字が書かれた短冊をあしらった着物で、何が書いてあるんだろうってめちゃくちゃ気になりました。
「蓬莱」とか「千歳」なんていう文字が見えたので家に帰って色々検索してみたところ、どうやら「島の千歳(せんざい)」という長唄が書かれているようです。
千歳は白拍子の名前なんですって。
白拍子は水干(すいかん)という少年の着物を着て歌や踊りを披露していたということで、つまり平安時代の男装の麗人なのね。
江戸好みで縞柄の色合いは渋いけれど、なんとも艶っぽい着物。素敵!
そして、ゆきのちゃんの上半身のラインがものすごく綺麗で憧れます。
鳩胸、なで肩。
抜き衣紋が似合う似合う。
はんなりとした風情なのに一転、徳利酒を飲み干して啖呵を切るところはかっこいい!
梅次♪あんこさん(杏野このみ)
梅が枝のピンクの着物。これも好きだ~!
シャキっと背筋を伸ばした男勝りな所作がいかにも江戸の芸者さん。
辰巳芸者は梅次のように男の名前をつけるんだそうです。
そんな向こう気の強さとちょっぴりコミカルなところがいいわ。
総太郎、梅次、浜次の三人で踊る深川マンボも素晴らしかった。
昔から受け継がれた名場面をサラッと持ってこられるのがさすが宝塚、100年を越える伝統なのよ。
ツッコミどころ満載!一つ目一家
衣装も行動もツッコミどころ満載なのが一つ目一家。
この人達、因縁つけては負け、そして因縁つけてはまた負けてを繰り返して、よく考えてみれば悪役にさえなっていないような~。
そんなお間抜け具合がなんとも愛おしくって大好きでした。
一つ目御前♪まなはるさん(真那春人)
青海波の袴にキラッキラの羽織。
腰には立派な大小二本差しで旗本というふれこみですが、正統派時代劇の衣装というより、なんとなく成人式に繰り出したヤンチャな男子の晴れ着に見えなくもない胡散臭さ。
もしかして、ホントは侍ですらなかったりして。
でもラストの爆破に巻き込まれて凄いことになっているのは乾分たちを見捨てなかった証だと思ってるの。
やってる悪事がせこい割には意外に鷹揚で乾分想い。
だから乾分たちは一緒にいてすごく居心地が良いんじゃないかしら。
悪の親玉だけど全然憎めない愛らしさ。
鬼熊♪あすくん(久城あす)
その厳つい名の通りマタギを思わせるようなヒゲモジャに衣装は毛皮のもふもふ。
肩には可愛いテン?が二匹もくっついています。
そして異彩を放つ100tハンマー!じゃなくって掛矢という道具とのこと。
火事と喧嘩は江戸の花。全焼した家をあの掛矢で取り壊して大八車に載せて運び出し、燃え残った釘や木材を取り分けリサイクルしていたんだそう。
一つ目一家のシノギってもしかして解体業?
わりと高所から状況を見ているような落ち着きで体幹もしっかりした感じ。
といっても武士の腰のすわり方とはひと味違うところがさすがあすくんなんだよな~。
とっても頼りになる現場監督タイプの兄貴です。
がっ!間違えて味方の猿蔵をその掛矢でぶちのめしちゃうのよ。
意外におっちょこちょいなところも可愛い。
虎吉♪つばさくん(天月翼)
細長~い足を常に折り曲げているんだけど腰がすわっているというよりは吹けば飛ぶような頼りなさです。
あと足元にレッグウォーマーみたいなの履いてるの。
あれは何なのかしら?旅用の脚絆ともちょっと違うような気がするんだけど。
なんにしても怪我しないように脛を保護しているのだろうから、やっぱ本職は解体業なのかも~。
といっても肉体労働というより落ちた釘を集める係なんだろうなって妄想してます。
背中に大刀、直ぐカッカする割には全然強そうに見えなくて、きっとそんな風にちまちました事が好きなタイプだと思う。
時々ピーピー泣く姿もなんだか愛らしい。
猿蔵♪るいくん(眞ノ宮るい)
持ってる武器は棒切れ二本。それでどうやってカチコミかける気なんだー?
せめて逃げ足だけは早ければいいのに、ぴょんぴょん上方向に飛んでばかりで結局とっ捕まるタイプだと思う。
帯に三猿があしらわれてるってタカラヅカニュースで知ったのでオペラでガン見したんですが、私の視力では見えませんでした。とってもちっちゃくて可愛いお猿さんなのかな?
あと肩から斜めに掛けた三つ編みの紐も気になります。あれは一体何でしょうか?
なんにしてもなかなかラブリーなオシャレさんじゃありませんか?
そして猿というだけに鮮やかな赤い股引がトレードマーク。
そういえば、ひとりだけシルエットがちょっとブカっとしてますね。
大工や鳶などの股引はピチッと細身ですが、座職の職人はゆったり目を好んだんだとか。
棒二本を使う座職の職人か~。う~む本業はなにかしら?
ネットで調べてみたら棒屋という樫の木から天秤棒などを作る職人さんを見つけました。
「今様職人尽百人一首」という書物にいろんな職人さんの絵が書かれていて国会図書館デジタルアーカイブで閲覧できます。
いろんな職業があるものねぇ。
一つ目一家のシノギは解体&リサイクル関係と想像してるので、あの棒って焼け残りの廃材から作ってるのかも~。
たぶん職人としての腕も半人前であんな短い棒しか作れないんだな。うぷぷ。
芸者さんにはいじられるわ、浜次さんにはぶっ飛ばされるわ、果ては味方の鬼熊さんの誤爆で気絶する羽目となる不憫な子。
もう、なにもかもがキュンキュンに可愛い。
猪崎先生♪かりあん(星加梨杏)
無口で美形の用心棒。
脇差は持たず大刀ひと振りだけをちょっと立て気味に帯に差しています。
「落とし差し」というんだそう。初めて知った。
斎藤兄弟が大小2本をきりりと水平方向にクロスさせているのと全然違いますね。
侍としてはちょっと崩れた格好だそうで、でもそこがニヒルでステキ。
そういえばラストのお縄のシーンではネギが1本頭に刺さってましたっけ。
刀もネギも1本差し。
ギャップ萌えが可愛いわ。
というわけで一つ目御前一家。みーんな愛おしかったです!
江戸で昭和にタイムスリップ
他にも同心市村の叔父貴♪おーじくん(桜路薫)の黒の紋付羽織に着流し。そして煙草入れ。
傘張り浪人大前田♪りーしゃさん(透真かずき)のボロッボロの刀の柄巻。
遠山の金さん♪あがちん(縣千)の桜色の襟巻きなどなど。
江戸に生きる人達のこだわりのアイテムがいっぱいでごきげんでした。
それに「花のお江戸で~チョイといなせな~」っていう主題歌もすぐに覚えて歌えちゃう。
これはいわゆるヨナ抜き音階ってやつですね。
4番目と7番目の音、つまりファとシが出てこない昔ながらのわかりやすいメロディ。
洋楽で日舞を踊る宝塚なので、たとえ調子が良い音頭調の曲でも「百年音頭」や「WELCOME to TAKARAZUKA」はヨナ抜きではなかった気がする。
今の時代のミュージカルで一曲まるまるヨナ抜きはかえって新鮮だったわ。
そんな古い演歌チックな主題歌も肩のこらないコメディ時代劇の展開も、この予定調和こそが安心なのよ。
1時間半、昭和の子供の頃へタイムスリップ!
とっても楽しい観劇でした。
コメント