スカステ視聴記録
初演は見ていませんが、みねちゃん(峰さを理)お披露目の再演、きりやん(霧矢大夢)の月組再演を劇場で観ています。
主要人物が悪い男、ダメ男という大好きな柴田作品。
「赤と黒」のジュリアン・ソレルからイメージされたというこの物語の主人公は、その高い自尊心と野心ゆえに二人の令嬢の心をもてあそぶ。
彼に無償の愛を捧げる元恋人の踊り子にはヒモがいて、こいつがまぁクズ男。
ダメ男フェチにとっては嬉しくてたまりません!
こんど星組のことちゃん(礼真琴)主演で再演とのこと。
全国ツアーは観に行くことはできないけれど楽しみ~。きっとぴったりだと思う。
ちょうど月組新人公演が放送されていたのを録画してたので、こちらを鑑賞することにしました。
星組再演ではヒモ男ジャックを演じたのが大好きだったカメさん(新城まゆみ)でした。
大人で知的でクールな美形が演じるクズ男は凄みがあってすごい迫力だった。
怖かった。ただのチンピラではなかった。ほんと素晴らしかったわ~。
月組新人公演ではちなつ(鳳月杏)が演じてました。
クズ男だけどかっこええ~~~~。
あぁ、それにしても、この存在感でなにゆえに新公主演ができなかったのだろう。世界の七不思議。
そうね。たまきち(珠城りょう)がいたのね。
たまきちが演じたのが…え~~~っと、アンリ?
あ~~そうだったわ。思い出したわ。
なぜかこの月組バージョンに突如あらわれた退役軍人アンリ。
本役のみりおちゃん(明日海りお)に合わせて書きかえられたのかしら。
みりおちゃんには罪はないけど。。。なんてことを!
月組再演が決まって配役が発表された時、真っ先に探したのがアンドレを誰が演じるかでした。
だって印象に残るいい役なんだもの。
でもいくら探してもその名前はなかった。
アンドレは盲目の令嬢アナベルが暮らす屋敷の下男。
星組再演ではバンケイさん(萬あきら)が演じていました。
けっしてアナベル付きの召使いではありません。
ご主人様やお客様の狩猟の準備をしたりお供をしたり、屋敷の雑用をこなす純で心優しい労働者階級の男。
無学で無口でほとんどセリフもないけど印象的な役だった。
もちろんアナベルのことを大切に想っている。
でも恋人になりたいとかそんなことは考えてもいない。
だって身分が違うから。
一方階級が異なる使用人に対しても変わりなく接し、ピアノ演奏を聴かせてあげるアナベル。
彼女は盲目だけれども他の上流階級の人達には見えていないものがちゃんと見えている。
とはいえアンドレは昔からの使用人で身内と言ってもいい関係。最初から恋の対象にはならない。
この芝居では階級という存在が重要な要素となっている。
なのにこの月組バージョンではアナベルの身の回りの世話が専門に雇われた上品な身なりの若き退役軍人アンリにかわっていた。
元軍人ということはつまり、人相手に銃が撃てる男だ。アナベルの父の部下だったなら、身分だって教養だってそれなりにあるだろう。
あ~~~。それじゃだめなのよ~~~。物語の根本が揺らいでしまう!
ただ月組新人公演でアンリを演じたたまきちはガッチリ体型の人だから、その点はとっても良かった。
アンリだろうがアンドレだろうが気を失った令嬢アナベルを抱きかかえるシーンがあるのよね。
あれは単なるお姫様抱っこじゃないの。
傷心のアナベルが魂が抜けてまるで抜け殻のように軽くなってしまったと見せなければならない。
本役のみりおちゃんは華奢だから「うんとこどっこいしょ」っていう感じ、抱えた体重感じまくりで...アナベルの儚さを表現できてなかった。
みりおちゃんの為にわざわざ役を作り変えたのならばここの演出も変えなければ片手落ちだわよ。みりおアンリはたくましい労働者階級の男じゃないんだから。
ここから先は重要なネタバレが含まれていますので芝居を未見の方は読まないでくださいね。
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このアンドレという役、ここで出番が終了し、観客は次の展開に気持ちが移っていく。
もう終盤は怒涛の展開だもの。
ところが幕がおりる瞬間になって一旦頭の中から消え去ってしまっていたこの男の存在が再び浮かび上がってくる。だからこそ、ラストにさらなる衝撃と余韻が生まれるのだ。
そのため存在感が確かな役者が演じることが必要だけど、だからといって途中で出番が終わるはずもないと予想できちゃう2番手スターさんが演じてはいけない。
もちろん、これから復讐しますよって銃を持って銀橋をウロウロしてもいけない。
衝撃の結末のネタバレをしてどうするのぉ。
元恋人の踊り子の無償の愛によってジュリアンがようやく真の愛に目覚め、ともに逃げること選んで自由まであと一歩という瞬間、何者かに命を絶たれる。その衝撃。
観客は一体誰が撃ったのか、何故こんなことが起こったのか、まだわからないでいる。
倒れたジュリアンにすがりつく踊り子。
次の瞬間、存在感はあったけれどもう出番は終了したとばかり思っていたあの心優しい下男が銃を手に茫然自失の状態で舞台袖からふらふらと現れ、ドラマティックな影コーラスと共に幕は降りていく。
ご主人様の狩猟のお供で銃の扱い方は知っていただろう。とはいえ狐や鳥は撃っても人を狙うなんてしたことがない善良な下男が復讐の銃爪を引いたのだ。
その切なさと余韻。
ジュリアンはアナベルのそばにいた下男の名前も存在もきっと覚えてなかっただろうなぁ。
上流階級の人間、あるいは上流階級にのし上がろうとしていた人間にとって下男なんていないも同然の人種だ。
愛を弄んだ男は無償の愛を捧げた名もなき男に殺される。
観客は幕が下りるその時に真相を知ることとなるわけよ。
どんでん返しの衝撃と伏線が見事に回収される快感。
だから退役軍人アンリじゃだめなの!
下男アンドレでなければ!
どうして下男アンドレを退役軍人アンリに変えて作ってしまったのかっ!
ダブル2番手という特殊状況ゆえ劇団側からの要請があったのだとは思うけどさ。
改変した演出家は誰?大野先生?
もぉ~~!3時間位説教したい気分よ。
来年の星組全国ツアー「アルジェの男」はダブル2番手などという特殊状況ではないはず。
なのでアンドレの復活を強く望みます。
できればひーろー(ひろ香祐)に演じてほしいな。
優しい顔の大男がいいの。
ひーろーなら演技力も存在感も申し分なし。
おねがい。
アンドレを
アンドレを!
復活させて~~~~~!!
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