「凱旋門」観劇感想1

【2022-08-11】
観劇感想

スカステの放送もないので念願の!初めての「凱旋門」です!

原作小説もバーグマンの映画も見ていないのでどういう話かもほとんど知らずに観ました。

その作品にではなく、いしさん(轟悠)個人の演技に芸術祭賞が贈られたということなので、もっといしさん演じるラヴィックの物語が大々的にフューチャーされる話なのかと思っていましたが、意外にも群像劇の雰囲気でした。

雪組トップスターだいもん(望海風斗)との競演ということで、少し初演とは違うのかもしれません。

ラヴィックの恋と復讐の顛末がさながら点描のように描かれていきます。

並行して、パリに逃れてきた他の亡命者達の日々もやはり点描のように描かれていきます。

それぞれの時間と空間と事の成り行きがポン、ポンと適度に飛んでいて余白がある。

それを結びつけるのが語り手的役割のボリス♪だいもん。

と思ったら、ボリスだけではなく、医師のヴェーベル♪翔ちゃん(彩凪翔)はセリフで、ホテルのマダム♪けいこさん(美穂圭子)はシャンソンを語ることで情景をつないでいきます。

語り手も点描のようです。

こういう点描写を物語としては捉えないタイプの人にとっては群像劇とは思えないかもしれません。

余白がもやもやしてダメだ~~って色々と脳内補完してしまうかしら。

まぁ、それはそれで楽しいけれど、これはどちらかといえばその余白を余白のままにして美しいと感じることができる作品だなぁと感じました。

そうして物語はドラマティックというよりもむしろ淡々と進んでいくのですが、

「灯火管制か。あまりに暗くて凱旋門ももう見えない」

というラヴィックの最後のセリフでふっと心がゆらいで静かに静かに涙が流れました。

なにがどうしてって説明はできないのだけれど、心が震えた。

とても美しい作品でした。

余談ですが、余白が美しい作品といって最初に思いつくのは宝塚でもなく演劇でもなく日中合作映画「呉清源」。大好きな映画です。

そういえば、囲碁棋士の呉清源を演じた主演のチャン・チェン(張震)もいしさん同様クラシカルでストイックな雰囲気を持つ役者さんだわ。

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