観劇感想
ダダ泣きしてしまいました。
まさかこんなに涙が出るとは予想しておらずハンカチを手元に握ってなかったのよ。
最初は指でこっそり拭っていたのですが、そんなもんじゃ間に合わなくなり、あわててバッグからゴソゴソ探して取り出すというとっても周りに迷惑な状況に。
お隣の席の方ごめんなさい。
宝塚ファンあるあるで結構フランス革命関連の本は読み漁っております。
といっても、私のフランス革命史観のほとんど全ては佐藤賢一さんの「小説フランス革命」によるもの。
この本は「小説」ですので、もちろんフィクションではあるのですが、綿密な調査の上に書き上げられており、描かれた史実に関しては恐らくすべて歴史通りではないかと思われます。
史実や資料に基づくキャラクター設定・心情描写が素晴らしく、本当にこういう人物だったんじゃないかしらと思えてしまうほど。
いったい何巻あったのか忘れるくらいの長編なのですが、あっという間に読めてしまいます。
というわけで、これまで宝塚で数々描かれてきた悪人としてのロベスピエール像にいささか不満を覚えていたわけでして。
先般の星組「スカーレット・ピンパーネル」でようやく、かいちゃん(七海ひろき)演じたロベスピエールに彼の苦悩の片鱗が垣間見え、ちょっと溜飲を下げたのです。
で、今回ついに!ついに!ロベスピエール主役!!
もう観る前からこの視点だけでも演出家あっぱれじゃ!と思ったわ~。
清廉の人。理想の人。
それを自分だけではなく革命を奉じる全ての人が同じ方向を向いている(向かなければならない!)と信じ、他者への共鳴・共感が出来ない不器用な人。
まぁ、大抵の人間は易きに流れるし、様々な利害のぶつかりや価値観の違いがあるわけで。
その頑なな理想ゆえに、盟友を粛清せざるを得なくなり、最終的には本来仲間であるはずのジャコバン派の中の脛に傷持つ人々の寝返りによって断頭台へと送り込まれます。
と、そんな話の流れは、当然ながら知ってたわけですよ。
が、その上を超えてきた。
孤独が胸に突き刺さる。
だいもん(望海風斗)のロベスピエール。それほどまでに君は孤独だったのかっ!と胸の震えが止まらなかった。
辛いのは、孤独が何であるかということに、そして自分が孤独であるということに、全く気がついていないところ。
そして、その孤独に気づき、受け入れた時は全てが遅すぎた!というところ。
もう、なにもかも取り返しがつかないのだ。
まあやちゃん(真彩希帆)のマリー=アンヌもやはり同じく孤独の人だ。
幸せだった日々が革命により突然奪われる。
マリー=アンヌの家族&婚約者(なんと眞ノ宮るい君!!!)が本当に優しく温かい雰囲気を醸し出していてね。
それがあっという間に死体の山と化すわけで(怖)。
それだけでも充分酷いことではあるけれど、何よりも一番残酷なのは自分一人だけが生き残ってしまったという罪悪感と孤独。
ロベスピエール暗殺を決意するのは復讐というよりもむしろ、そのことによって自分自身も殺すことになるからなのかもしれません。
実際、マラを暗殺したシャルロット・コルデはギロチンで処刑されていますし。
そんな孤独と孤独が、まるで壊れそうなほど薄いグラスがカチンと触れ合ったように響き合って生まれた二人の恋。
それは恋と呼ぶにはあまりにも儚くて危うくて。
当の本人達でさえ、その感情に美しく温かい名前をつけることが出来ない。
憎むべき人の理想に心ひかれてしまった葛藤
革命の理想が今潰されんとすることへの焦燥
「葛藤と焦燥」と言う名の恋。
凄かった。
凄かったね。ここの二人の歌。
息をするのも忘れて、ただただ圧倒された。
そしてラストの牢獄シーン。
花組「愛と革命の詩」でもラストは牢獄。
二人揃って断頭台へと登る結末でも、そこにはある種のカタルシスがあった。
だけど「ひかりふる路」での牢獄シーンの辛さときたら。
ようやく、己の孤独に気が付き、それを受け入れ、心を解き放つことが出来たというのに…
もはや、共に生きることも、共に死ぬことも出来ないのだもの。
いやぁ。辛かった。苦しかった。
と、幕が降りて、グシャグシャの顔で周りを見渡したら、私ほどダダ泣きしている人はいなかった。
あれま。年取って涙もろくなったかしらねぇ。泣きのツボが変なのかしら?
なにせ登場人物が多く、その利害も複雑に絡んでいる時代の話。
しょうちゃん(彩凪翔)の美しい黒幕っぷりが素晴らしかっただけに、欲を言えばロラン夫人の最期の言葉
「おお、自由よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか」を入れてほしかったかなぁ。
とはいえ、この言葉が活きるようにするためには、ジャコバン派とジロンド派の攻防をしっかり描かなければならないだろうし。
そうなると物語の視点が分散してしまうかぁ。そこまでを含めて1幕にまとめるのはやっぱり至難の技かも。
でも、とてもいい作品だったと思います。
楽曲も歌唱もほんと素晴らしかった。
心情にも惹きこまれた。
最初から最後まで一瞬も飽きることなく、とにかく、とにかく圧倒されました。
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