「WEST SIDE STORY」観劇感想

【2018-01-21】
観劇感想

ヅカ友さんにお誘いいただき東京国際フォーラムまでやってきました。

まさか観ることが出来るとはっ!感謝感激でございます。

映画はテレビ鑑賞だけれど何度か観てます。

それから劇団四季版も。

なにぶんもう30~40年くらい前のこと。その頃は私もそれなりに若かった。

そんな若かりし私から見ると、当時の四季の俳優さんたちは随分おじさん・おばさんに見えてしまいました。

まぁ舞台になるとこんなもんかぁ。っていう感じだったかなぁ。

あら「COOL」はここで歌うんだ。とか。

四季版の「America」は確か幕前でダンスも少なく、えらくこじんまりしたナンバーになっちゃうんだなぁ。とか。

映画のミュージカルナンバーの印象が強すぎたせいなのか、馴染みがある名曲ばかりだけれど舞台自体はピンとこなかった記憶があります。

当時の私は若すぎてこのミュージカルの社会背景なんてわかっちゃなかったのです。

それでも四季の俳優さんたちは流石に本物の男性だけあってダンスの重量感や瞬発力は素晴らしいもんでした。

あのフェンス越えもすごく印象に残っています。

タカラジェンヌの努力と、困難をものにする力は素晴らしいものがあるとはわかっているものの、流石にこの舞台に関しては歌もダンスもハードルが高いんじゃないの?

だって全員エニボディーズみたいなもんなんだよ。

歌も音域も変え、ダンスも演出も宝塚向けにロマンチックに作り直しちゃうんじゃないかしら?なんて思い込んでました。

作り変えてなかった!

想像以上に素晴らしかった!

そして、想像以上にずしりと重苦しかった。

貧困。偏見。差別。暴力。移民問題。

弱いものがより弱いものをいじめる構図。

60年以上前のミュージカルに描かれた社会問題は何一つなくなっていない。

というか近年ますます酷くなっているような。

ジェッツの若者たちの首の細さよ。

貧しく家庭の愛情にも恵まれない行き場のない子供達が(そう、今やオババになった私から見たら彼らはまだほんの子供なのだ)自分の居場所を証明するかのごとく、けんかや縄張り争いに明け暮れる。

時としてその矛先が同じ仲間の中の弱い者に向けられるのが悲しい。

一番弱いベイビージョン♪あきも(秋音光)の両手足を掴んで無理やりアニータの上にのしかからせるシーンが本当に辛い…。

うでっぷしは強いが心の優しさがにじみ出ているディーゼル♪かけるくん(風馬翔)ですら、集団の中にいると行動がエスカレートしていく。

昨今の少年事件とか、なんかもういろんなこと考えちゃって余計に辛いのよ。

一方シャークスの若者たちは少し大人っぽく見える。

貧しくとも彼らには家族や同胞など守るべきものがあるから。

なかでもベルナルド♪キキちゃん(芹香斗亜)の佇まいが、なにかひとつ飛び抜けた感じがあった。

なんでだろう。

そう!誇りだ!!

キキちゃんベルナルドはすごく誇り高い!!

頭が切れ、度胸があり、野望がある。

なのに色が浅黒い移民というだけで、自分より能力の低いアメリカ人ども(と彼は思っている。そして実際そうなんだと思う。)から見下され、不当に扱われる。

働けど賃金は安く、貧困から這い上がれるチャンスさえもつかめない。

そういう、やり場のない怒りを内側に秘めている。

この差別と偏見に満ちたアメリカの地で愛する人たちを守り、そして這い上がる。

その強い意思と憤怒で敵と対峙する時のキキちゃんの目は冷たくギラついている。殺意を感じるほどに。

アニータ♪そら(和希そら)。

歌もダンスも芝居も、なにもかも素晴らしかった!

むっちゃいい女だった。

ベルナルド♪キキちゃんのアニータを見つめる目が優しくて色っぽいから、さらにさらにいい女に見える。

そして、この素敵なアニータが選んだベルナルドは、さらにさらにカッコイイ男に見える。

アニータは大人の女なので、繰り広げられるケンカが、思い通りにはならないアメリカの底辺を生きる男たちの単なるガス抜きであることを知っているのね。当の男たちですら実はよくわかっていないのに。

うっぷんばらしのケンカで終わるはずだった。

それが終われば素敵な夜(Tonight)が訪れるはずたったのに。

アニータの受けた傷はあまりに深く、見てて本当に辛かった。

こんな技術的にも内容的にも宝塚で上演するにはかなりヘビーな作品に真正面から取り組んだ制作陣と素晴らしいパフォーマンスを見せた出演者には最大の賛辞を送りたい。

ゆりか(真風涼帆)率いるこれからの宙組、ものすごく楽しみだわ!!

追記

先程、スティーブン・スピルバーグ監督がWSSをリメイクするとの情報を知りました。

実現するかどうかは、まだわからないのかな?

つまりこれはレトロな過去のミュージカルなどではなく、今の時代にも突きつけられるべき題材ってことなのですね。

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