観劇感想
万葉ロマンはいくつかあるけれど、さらに古い弥生時代あたりの日本を舞台にした作品っていままであったのかしら?
史実として知られた話はほぼないので、自由にどんなふうにでも話は作れるはず。
事前情報完全シャットアウトで観劇に望みましたので、さぁいったいどんなお話なのかしら。
冒頭、お師匠さんに助けられ、武術の修行に励む主人公タケヒコのみりおちゃん(明日海りお)、しかし悪役軍団にお師匠さんは惨殺されて…。
このところ悪の側にも一理あり、という複雑な構造を持つ話が多くなっていますが今回は全くの悪役軍団。
でもスカッと単純な勧善懲悪だっていいじゃない。
私こういう話、映画で100回位観てる~~~。
なんだかゴールデンハーベストのロゴと音楽が背景に見えた気がしたぞ。
主人公は若き日のジャッキー・チェンかユン・ピョウ。
もっと昔ならショーブラザーズ作品でジミー・ウォングとかアレクサンダー・フーシェンとか。
多くの宝塚ファンはこういう話全く趣味じゃないでしょうが、そうです私は香港映画大好きなので全然OK!
きっとお師匠さんの仇をとるのね。恋もするのね。仲間も出来るのね。
いいじゃない。どんどん行け~~~。
と思ったら、話は全く違ってきた。
お師匠さんの仇をとるのはとりあえず、どうでもよくなったみたいだ。
まっいいか。宝塚だもんな。
宝塚らしく素敵な仲間はできた。仲間内のせつない片思いの連鎖も勃発だぞ。
そしてタケヒコには恋する人が。
しかし相手は卑弥呼となって神に仕える身、それでも禁を破ってまで会いに行く。
おぉ~~~源氏の君と藤壺の宮の逢瀬のように禁じられた恋だ!
いいじゃない。どんどん行け~~~。
と思ったら、話は全く違ってきた。
禁を破ってまでホイホイ会いに行って、あなたは女王として民のために生きろと説教とはっ。
いったい何しに忍んでいったのだ?ありゃぁ恋じゃなかったのか?
とはいえ禁を破ったことがばれて窮地に陥るタケヒコ。
だが、お師匠さんの秘技を使って窮地を脱出。
なんか小狡い、おっとっと、ここは賢いと言ってあげなければいけませんね。
一方、邪馬台国が混乱しているこの機に乗じて渓谷の道を一気に攻め込む作戦の悪役軍団。
ということは、何らかの手段でその作戦を知ったタケヒコと仲間たちが、谷底を進む悪役軍団を上から急襲し大人数の大立ち回りで大逆転の大勝利が見られるってことね。
おぉ~~~「王家に捧ぐ歌」でもあったやつだぞ。
高低差のあるセットでの迫力ある立ち回りもしくはダンスシーンになるんだな、きっと。
いいじゃない。どんどん行け~~~。
と思ったら、そこに行く前の森のなかで数人の敵と出くわすタケヒコと仲間たち。
そ、そこで~~~~~?
こ、ここで死ぬの?キキちゃん(芹香斗亜)!!!!
この書き割りの森のなかで?
悪役キキちゃんはすんごいかっこよかったけど。
キキちゃんも素敵な仲間達もみんな死んじゃったけど、次のシーンこそ谷底大立ち回り?…あるわけないか~。
戦の部分は説明ゼリフのみであっさり終了報告。まじか~~。
偶然にもお師匠さんの仇と悪の軍団をめでたく倒したタケヒコはお師匠さんの故郷の魏に渡る事を卑弥呼に伝える。
それほどの仲でもなかったしな。
心の痛みもなくさらりとお別れってことなのね。
というわけで、なにもかもびっくりするほどみごとに肩透かし。
まぁ予想はしていたけれど…。
早い話がサトルはサトルでした。
バウデビュー作も大劇場デビュー作も観た演出家さんなのでね。もはや呼び捨て。
思いおこせばあの時も、どっちもどっちの作品だったっけ。
それでも宝塚。
お楽しみは他に色々あるのだ。
キキちゃんの格好良さはもちろん、まいてぃ(水美舞斗)も声を出せない役なのでセリフはラストの一声のみだがカッコイイ。
今回は色気ダダ漏れ系ではなく、筋肉系まいてぃ。
セリフはなくても全身を使い、多分みんなより少し年長の逞しい豪の者という感じが出てた。
酒の盃に月が映ったのを見て美しいって感動してハッとするとこころ、ちゃんと伝わりました。気持ちを受け取れてちょっと嬉しかったわ。
無骨だけれど心の美しい兵士なのだね。
「愛と革命の詩 アンドレア・シェニエ」でセリフはないけどロベスピエールを演じ、下級生とも思えぬ渋さを見せてくれた、まいこつ(紅羽真希)が後に卑弥呼となるマナを迎えに行った兵士役で目立つ場面をもらってて嬉しかった。
相変わらず渋い深みのある表情をしている。顔が誰かに似てるってずっと思っていたのだけれど、そうだカリンチョ(杜けあき)だ。
芝居も声も良いところも似てる。
マギー(星条海斗)の素晴らしい圧を感じられてとってもうれしい。でもキキちゃんの言うことを聞いてあげてよ。谷底進軍はヤバイって。
今回は愛嬌を封印して有無をも言わせぬ為政者ぶり。髭が似合う~。
あたりを払うような美しさのじゅりあ様(花野じゅりあ)。
私ダメ男も好きですが、こんな風に自己中だけれど実は心の内側に脆いところがある女性っていうのも大好物なのですよ
愚かだけど哀れさも感じさせてとっても素晴らしかったわ。
ゆきちゃん(仙名彩世)はこれまでスパイスの効いた役が多かったから、こんなに清らかな少女役を観るのは初めて。
神がかりだなんて一歩間違えばコメディになりかねない役をきちんと真実味をもたせて健気に演じた。
やっぱりなんでも上手いわ。
トップ娘役就任おめでとうございます。
今度はもっといい作品で、その力をおもいきり発揮できること祈ってます。
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