ここだけが惜しいよ「川霧の橋」

【2021-11-07】
LIVE配信感想

脚本も演技も本当に素晴らしくてすべてを絶賛したいところなんだけれど、どうしても気になることが一つだけあるのだ。

気になること、それは衣装。というか帯結び。

後半、清吉の女房になったときのお光の衣装。

帯の結び方が文庫だった。

そこだけでなく他の役の衣装でもちょいちょい文庫結びが出てきてました。

でも文庫結びって町娘はしないんだよなぁ。武家の女性の帯結びだから。

もちろんなにがなんでも時代考証を正確にする必要なんてないよ。

江戸の初期と後期じゃ色々違うらしいし、忠実に再現したらむしろかっこ悪い。

貧しい暮らしの時の衣装でも少しでも宝塚らしく背中にリボンの文庫結び。可愛らしくしたいという意図だったのかもしれない。

でもパラレルワールドの出島ならばともかく、本格時代劇の衣装にはお約束があるのよ。

いや、単にそういうお約束を守って欲しいっていう意味ではないの。

武家の娘と町人の娘では所作が違うのだ。

文庫結びは背中をピンとさせた武家の女性の所作でこそ綺麗に見えるからなのよ。

長屋住まいの貧乏な浪人の妻でも結び方だけは文庫にしてしゃきっとしている。だからたとえ質素な着物と帯だとしても武家の女性とわかる。

でも町人の娘のちょっと腰をかがめた柔らかい所作と文庫結びの相性はとても悪い。

背中に変なものがくっついている感じで不思議なことに美しく見えないんだよね。

せっかく演者が醸し出している江戸の町人文化の風情を衣装が台無しにしてしまう。

これは本当にもったいない。

日本物というだけでも難しいのに、ただそれだけでなく武家と町人では姿勢や動きが全く違う。

それを稽古して努力して、ちゃんと表現している演者達の足を引っ張るようなこと、してほしくないなぁ。

初演はどうだったかしら。

さすがに思い出せないけど少なくとも文庫ではなかったはず。

幸次郎の若妻およしさんだってあんなに上等の着物に織りの帯で文庫結びだなんてことは絶対なかったと思います。

あれは完全に良いところの武家の御内儀を表す衣装よ。

大店のお嬢様時代のお組さんなら舞妓さんみたいにだらりと長い帯結びはありだと思うけど。

でもラストの幸次郎・お光の蛍のシーンは初演と同じくちゃんと引き抜きの帯結びになっていたからよかったわ~。ホッとしたわ~。

お太鼓橋での情緒あるふたりの構図ってやっぱり下側がふっくらとふくらんだあの柔らかな帯結びのシルエットがあってこそ絵になると思うのです。

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