LIVE配信感想
どんなに急いでも帰宅がギリギリなのですが、なんとかほぼ最初からLIVE配信を見ることができました。
おひかえなすっては手を洗いながらスマホの小さい画面で見たけどね。
東京初日が延期となりどうなることかと思ったけれど無事新人公演を上演することが出来て本当に良かった。
夢介♪あがちん(縣千)
「凱旋門」で新公初主演してからしばらく主演がなく、一人っ子政策の雪組なのに珍しいこともあるもんだ~なんて思ったけれど終わってみれば「CITY HUNTER」「夢介千両みやげ」と3度の新公主演。
もっとも主演でなくても常に一番かっこいい役を演じさせていたような気もします。
壬生では土方歳三、ワンスはマックス。
考えようによっては鬱屈した主役よりもわかりやすいかっこ良さだったかもしれません。
そして新公主演を分け合った1期下のあみちゃん(彩海せら)は月組に組替。
結局のところ雪組は一番大事にしたい男役をたった一人。ヒーロー役者のイメージをけっして損なわないよう大切に育てるのね。変わらんなぁ。
だから結果的には冴羽獠に夢介と割と似通った感じの主演になっちゃった。
陰影の深い演目をもっと見てみたかったよ。
「fff」の新人公演が出来なかった事がつくづく悔しい。
ベートーヴェンでもナポレオンでもまさかのゲーテでも。どんなあがちんが見られただろうか。
もっとも彼女にとってそういう陰りはむしろ必要ないのかもしれない。
次々と公演が中止に追い込まれる中でバウ初主演も新人公演も完遂出来たあがちんは本当に強運の持ち主でもあるわ。
そういう陽のパワーもトップを目指すスターとして強いところ。
さて、夢介。
ぼ~~~~っとした牛のような男と評されるので全面的にかっこいい役というわけではないのだけれど、めっちゃかっこよかった。
時代劇が似合う!
顔の大きさやしっかりとした体格が時代劇向きなのかも。
それに日本人が歌いやすいヨナ抜き音階だから歌唱も特に大きな破綻はなし。
少々の音程の外しがあっても、それがあんまり嫌な感じに聞こえないのもあがちんの強みかもしれない。
ゾワゾワ気持ち悪い外し方と、味のある微笑ましい外し方ってあるんだよね~。
私はもともと音程には厳しくないタイプだし、あがちんの歌は朗らかで楽しかったです。
芝居もとても良かった。
特に印象に残ったのが、お銀に「畑仕事ができるかなぁ」って言うところ。
お銀に嫁が務まるのか?という農家の惣領としての目線ではなく、逆に田舎者の自分がお銀に愛想をつかされてしまうかもしれない、という心もとなさがセリフや表情から感じられました。
お銀は押しかけ女房で一方的に夢介に惚れているように描かれているけれど、あがちんがふと見せた寂しげな眼差しによって夢介もお銀と離れがたく思っているのだということがわかります。
なんだかすごく母性本能くすぐられてしまった。
大型ワンコの人懐こさと骨太なかっこよさの両立というのがこの人の魅力。
これからの活躍もますます楽しみです。
お銀♪まるこちゃん(華純沙那)
完成の早い娘役の世界とはいえ研3にして日本物の、しかも座っていればいいような愛らしいお姫様ではなく肩書つきの女スリで初ヒロインをつとめることとなったまるこちゃん。
鉄火肌の悋気と秘めた純情という一筋縄ではいかない難役を見事に演じていて素晴らしかった。
大人っぽく見えたり可愛く見えたりと表情の色合いも多彩。
ただ、やっぱりきわちゃん(朝月希和)ってすごいんだなぁ。って思ったのが夢介に惚れちゃったところね。
あそこキラ~ンってエフェクト付きのコント仕様で客席はそれなりに笑ってたけどさ。
でも、きわちゃんは夢さんに対する反発と湧き上がる恋心のないまぜ具合が秀逸で。
だからあの効果音とかいらんわ。芝居でちゃんとわかるわ。って思ったの。
石田先生!もっと演者を信じろよ!と。
でも、まるちゃんはまだ効果音と照明の手助けが必要だったかも~。
今回はギャグ的演出だったからそれで何も問題はないのだけれどね。
細やかな心情の動きを大きな舞台でどう表現するかは本当に難しい課題だわ。
でも、きっとそれが出来る人だと思う。
総太郎♪かせきょー(華世京)
前回新人公演の等身大の豊くんからいきなりの二番手。
しかもコメディ部分を一手に引き受けるという一番難しい役どころ。
流石にあーさ(朝美絢)のような艶やかな色気はまだ出せないけど、屈託のないアホボンぶりがとっても愛らしかった。
春駒の楽屋でのやり取りなんかには、もう少しポンポンとした間の良さが欲しいところではあったかな。
そういうところに首席で何でも出来る優等生ゆえの生真面目さが感じられます。
いやいや、喜劇はとにかく一番難しいのよ。
それを破綻なくサラリとこなすとは、スゴイ実力だわ。
三太♪いちかっち(一禾あお)
最初はずいぶんと朗らかで陽気な三太だな~って微笑ましく見ていたら、とんでもない爆弾が仕掛けられていた。
「親無しっ子だからね」と夢介に噛みついたところからの一連の芝居。
三太の隠された心の棘を思い知って、はっと胸をつかれた。
親なし、宿無しでもお兄ちゃんにくっついて行けば大丈夫だと安心している妹と弟にはけっして見せずにきたけれど、その生きてきた道にどれほどの苦難があっただろうか。
夢介に「親がいなけりゃ生まれてこれない」と正論を言われようが、それで納得いくわけもない。
だって、ず~~~っと幼い妹弟を守って、ひとり気を張って弱みを見せずに生きてきたんだよ。
これまでの三太の明るさと意気がりは全て心の奥の恐れと孤独を隠すものだったのか!と一気に景色が反転する。
けれども誰にも見せられずにいた脆い自分を夢介にさらけ出せたことが、どんなにか三太の肩の荷を軽くしたことだろう。
しかも、いちかっちの一瞬見せた鋭い芝居があがちん夢介のひだまりのような暖かさを際立たせてもいた。
ほんの短いやり取りの中にこれだけの背景と心の流れを感じさせるなんて素晴らしいわ。
毎回最高を更新するいちかっち。
実に!実に!見事でした。
嘉平♪めいちゃん(真友月れあ)
冒頭、まだ帰ったばかりで洗面所で手や顔を洗いながらスマホで見ている状態だったんだけど、突然聞こえてきた響きのある声にびっくりした。
じいやの嘉平なので、しわがれた老け役らしい声ではあるけれど、とても明瞭でよく響く声。
台詞回しは限りなくゆうちゃん(汝鳥伶)に似ていて、足の運びも、背中の丸みもとても若いお嬢さんが老け役を演じているとは思えません。
イソップのくだりなんか特にうまかったね~。
お年を召しているので新しい話題への反応がワンテンポ遅れるのよね。
いやはや芸が細かい。こんなに達者だったとは。
これだから新人公演は面白い。
走助♪あさとくん(霧乃あさと)
達者と言えばあさとくんも!
本役のかせきょーくんと同期なんだけれど、もう少し年上な感じ。
岡っ引きとしての物腰も完璧だし、同心市村様の頼もしい右腕として仕事もできそう。
どうかこのまま時代劇に出てください!って思ったわ。
本役では伊勢屋の丁稚でポワ~ンとした愛らしさなのに、まるで雰囲気を変えていてびっくり。
そして前回より頬のラインが少しシュッとしてきたので気がついたのですが、あさとくん、とっても美人さんです。
華やかでちょっぴりファニーフェイスなかせきょーくんと、クラシカルな美形のあさとくん。
持ち味の違う同期で切磋琢磨し、どんどん大きくなって欲しい!
悪七♪のりぴー(紀城ゆりや)&お滝♪りなくる(莉奈くるみ)
のりぴーはきれいなお顔だなー。
声もまだ愛らしくって、だから目一杯悪ぶっている感じでした。
しかも女房にお滝のりなくるちゃんがいい女っぷりでね~。
ありゃぁ間違いなく姉さん女房。
完全に養ってもらってるね。
しかし、りなくるちゃん。本役との落差よ!
だって本役の亀吉は絶対青っ鼻垂らしてるでしょ。
あの表情、あの喋り方。
メイクで鼻水描いてなくったって演技でわかるわ。
私の幼少時代、つまり昭和の白黒フィルムの時代にはたくさんいたのよ、なぜだか四六時中鼻水垂らしている子が。
それが何をどうやったらあんな徒っぽい小唄の師匠になるのやら。
まさにカメレオン。本当に巧いわ。
金さん♪めぐちゃん(聖海由侑)&お糸♪みちちゃん(愛陽みち)
二人ともとっても声がステキ~。
と思ったらショーのデュエットダンスでカゲデュエットをしている二人なのか!
めぐちゃんと斎藤兄弟♪しゃんたん(壮海はるま)、きっすい(希翠那音)三人で歌うところは見事なハーモニーでしびれました。
ちょっとべらんめえな口調も明瞭。芝居もうまい。
遊び人風情の時でもどこか深みがあって知性的。
これは名奉行間違いなしね。
みちちゃんは私の大好きな友人と雰囲気がよく似ていて前からずっと気になっている娘役さんなのだ。
その友人はとても感性が鋭く面白い女性なので、みちちゃんにも一味違う個性を感じるのよ。
総太郎との縁談を嫌がるところも、みちちゃんの愛らしいけれどシャキっとした口跡が彼女の自立心の強さを感じさせてとっても魅力的でした。
ふたりとも次回は歌がたっぷりの役でみてみたいな。
1つ目一家
一つ目の御前♪よっしー(蒼波黎也)
原作を読むと一つ目の御前って偽旗本なんだよね。
もしかしたら本当は侍ですらないのかもしれません。
本役のまなはる(真那春人)はそのあたりの表現が実に上手くってなんとも胡散臭いんだけれど、よっしーは割りとリアルな悪役でした。
背も高いし、表情も怖いし、侍としての圧があるんだわ。
猪崎先生♪あっさん(麻斗海伶)
にこりともしない冷徹さ。
円月殺法とかやりそうだったよ。眠狂死郎ね。若い人は知らんよね。
配信だからラストのネギ刺さっているところはあんまり確認出来なかったんだけれど、どんな表情だったんだろう。見たかった。
虎吉♪がーふー(風雅奏)
なんとも言えないすっとぼけた表情のガニ股のおっさん。
いや、別にガニ股ではなかったのかもしれないけれど、そんなおっさんと感じさせる雰囲気だった。
気になって気になって虎吉見たいんだけれど、映してくれないLIVE配信のもどかしさよ。
芸者衆
浜次♪あやちゃん(夢白あや)
余裕の芝居。
あでやかではあるけれど、痛々しいほど痩せていてちょっと心配になりました。
特に日本物はもう少しふっくらしている方が綺麗なんだけど。
次回大和路の梅川は遊女としてあまり格が高くはない見世女郎だし、やつれた感じがいい方に作用するかもしれませんが。
トップ候補として期待の娘役さん。どうか健康第一で。
梅次♪りりちゃん(琴羽りり)
チャキチャキっとした辰巳芸者の雰囲気がよく出ていたわ。
こういう感じの芸者さんリアルにいそう!
なんか好きなんだな~。りりちゃん。
大人っぽくて、どっか玄人っぽい抜け感があって、でもちょっと面白い。
歌う芸者♪ようこちゃん(千早真央)
ダンサーのイメージだったけれど、なんと歌で抜擢。
もう少し邦楽のテイストが歌に乗せられればさらに良かったかも。
でも、ダンスもすごい上に歌も上手いとは!今後がとっても楽しみです。
とにかく出てくる人すべて上手くって、これからの雪組がますます楽しみ。
素敵な新人公演だったわ。
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