観劇感想
黒地に影のような赤いバラのイラスト。
ナチュラルなメイクが美しいキキちゃん(芹香斗亜)がちょっと気だるい感じでじっと見つめるポスターがとても気になっていた「群盗-Die Räuber-」を観劇することができました。
冒頭、若者たちによる革命についてのモノローグ。
音楽はベートーヴェンの月光。
石造りに美しい赤い蔦?の装置がとても重厚で、いかにも文芸物が始まりますよ!
と思わせておきながら...
いきなりポップな疾走感のソング&ダンスのオープニング!
ほよぉぉ?
芝居が始まると、あのアンニュイなポスターのイメージとは真反対にキキちゃんはキラキラ笑顔で屈託がない。
ほよぉぉぉぉ?
オババの頭ではこの芝居の展望が見通せずに最初はオロオロしてしまいましたよ。
小柳奈穂子先生だったのね。
この先生の作品は、なんというか、漢字のすべてにちゃんとふりがながふってあるっていうイメージです。
わかりやすくてとても有り難いのだけれど、なんというか香気が足りない気がする。
心の中は掴みきれないものでいっぱいなのに、求めるものは「自由か死か」みたいにたった2つの選択肢しかないという矛盾。
青く、熱く、痛い。若者ならではのセリフの数々。
とても好きです。
だからこそ、それをアニメっぽい音楽の中で描いて欲しくないの。なんだか軽くみえてしまうもの。
外国文学作品といえば古い私はやっぱり太田哲則先生をおもいだしちゃうんだなぁ。
太田作品ならすっごい五重唱があっただろうに。
でもね。そのアニソンをぐっと我慢して乗り越えてしまえば、話の展開はおもしろかったし、とても良い作品でした。
権力への漠然とした不満や正義感。
それからちょっとした冒険心。
何をやるべきかわからないまま、まるで夏休みのピクニックのように若者たちは群盗となる。
最初のうちは意味不明とも思えた、あの、走れ~走れ~おれ~た~ち(全然違います!)みたいなポップな音楽の意図も、話が進むにつれ、なんとなくわかるような気がしてきました。
いつの時代だって、どこの国だって若者というものは、恐れ知らずで考えなしだ。
でも考えなしに起こした行動が萌芽となって、やがて何かが自分の中で明確な形となって膨らんでいく。
一方でそんな風に気軽に始めた冒険が取り返しのつかない事態となることも、いつの時代だって、どこの国だってあるのだ。
無残に打ち砕かれ、一見まったくの無駄な結果を迎えることとなる若者たちの行動。
「さぁ!君たちは行け!!」
たとえ途絶えたように思えても、その想いはいつの間にか次の時代へと受け継がれていく。
終幕、白地に墨を点々と撒き散らしたような現代的なシャツの衣装で歌うキキちゃん。
素晴らしかった!!
もう!圧倒的だった!!
あのコスチューム物らしからぬ現代的なポスターも、時々差し挟まれるポップで疾走感あふれる音楽も
すべてがこの象徴的なラストシーンのためだったのね。
若者の普遍のきらめき。
無造作で衝動的な美しさ。儚さ。苦悩。そして希望。
何もかもすべてが、ぐわ~~~っと観客に向かって解き放たれたようでした。
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