若き演者たち「群盗-Die Räuber-」2

【2019-03-03】
観劇感想

さて、宝塚ファンは上演作品が決まると原作を読んだり時代背景を調べたりする方が結構多いかと思いますが、私の場合はせいぜいが宝塚のホームページで概要を1回読んだか読まないかくらいなもんで。

今回も、キキちゃん(芹香斗亜)の恋人がじゅりちゃん(天彩峰里)。パパが安定のりんきらさん(凛城きら)というくらいしか事前情報の記憶がなく。

その上、役の名前も覚えてなかったもんだから、芝居の導入部でとんでもない勘違いをやらかしてしまいました。

というのも、少年役の真白悠希くんがびっくりするほどうまいのよ。

芝居も立ち居振る舞いも堂々たるもの。

まだ研1さん?ひょえ~~。

いえいえ、もちろんもうひとりの少年の碧咲伊織くんだって研2とは思えないほどしっかりした芝居だったよ。

ただ着こなしや姿勢が野暮ったく見えて主役の少年時代のようには見えなかったの。

多分、衣装のサイズ感があってなかったんだと思う。

もうちょっと体にあった、そしてもうちょっとシックな衣装を選んで欲しかったわ。ベルばらの小公子、小公女みたいで物語にもそぐわない。

せっかくの好演なのにあれではかわいそう。

そんなわけで少年時代の場面では完全に真白悠希くんが主役なのですわ。

だもんで、役柄も役名も覚えていない私はてっきりこの子が成長してキキちゃんになるのね。と勘違いしてしまったのだ。顔の輪郭までキキちゃんっぽかったんだもん。

なるほど、その複雑な生い立ちからあのポスターのアンニュイなキキちゃんの表情へとつながるのね~。ふむふむ。なんて思っちゃったのぉ。

そしたら、大きくなったらキキちゃんキラキラ!

なんの屈託もなく、すくすく育っておりました。

おろ?

そっちだったんかい!あぁアホな私。

でも真白悠希くん。覚えました。凄い子や。

群盗メンバー。

もう、ほとんど、はじめましての人たちばかり。

全員新人公演学年?

けれどみんなとても声が良く、歌もうまい。

中でも金髪たわし頭のよねくん(雪輝れんや)。

ちょっとハスキーな太く深い声。役の個性が明確な芝居。

冒頭モノローグの第一声もこの人なのね。素晴らしかった。

なっつん(なつ颯都)はどことなくあいちゃん(愛月ひかる)を思わせる顔立ちに見事なスタイル。

これまでの舞台姿を少し知っている二人。

ほまちゃん(穂稀せり)は、もはや余裕だね。任せて安心。

あられ(愛海ひかる)は「天河」の少年役が印象的でとっても期待をしてたせいか、思ったよりちょっとおとなしかったかな。

芝居の上手い人なだけに何かプラスαが欲しい。それが何かはわからないけれど。

なっつ(秋奈るい)も私にとってははじめましての人。

こんな大役きっと初めてだろうけど、ちゃんと上手い。

ブルジョワ学生の群盗仲間のなかで唯一、食うや食わずの下層階級出身。

思想的な背景はなく(というか貧しさゆえにそんな余裕などないのだ)結局は目先の欲にとらわれた行動に出てしまう。

ただそれを表現するにはちょっと上品すぎだったかなぁ。

役の感情は十分伝わるのだけれど体の使い方がシュッとしている。

宙組男役は持ち味がスタイリッシュなので、こういう役はなかなか難しいね。

搾取される民衆の苦しみを体現したのは少年役のここさくちゃん(湖々さくら)

子供だし学もないから「革命」という言葉も定義もわからないけれど、この時それを心と体で望んだ唯一の人物。

ここさくちゃんの泥臭い(褒めてます!)熱演が素晴らしかった!

ここからキキちゃんの表情もガラリと変わる。

それを引き出せるだけの説得力のある演技でした。

この子の死によってひと夏の冒険のように始めた群盗ごっこは後へは引けない深みへとはまってしまう。

もしもあそこで投降していたなら、元々はブルジョワ出身の彼らは家の金と権力とでそこそこのお咎めで済んだのかもしれない。

でもそれを選ぶ事を自ら禁じ、悲劇へと突入していくのね。

好き好き大好き!れいなちゃん(華妃まいあ)

ヒロインのじゅりちゃんよりキキちゃんとの絡みが多く、もしかしてダブルヒロイン?といってもいいくらい。

かっこよくて美しくて!そしていじらしくて哀しい。

でもなんだか随分、せーこ(純矢ちとせ)に似てきたなぁ。

せーこ大好きだし、娘役さんが艶やかさを増して大人っぽい役も似合うようになるのはとても嬉しいことだけれど。

オーシャンズ11の新人公演やっぱりダイアナなのかしら?でもダイアナを見事に演じられるであろうことはもはや容易に想像できるもん。

れいなちゃんのヒロインが見たいの!

ぜひぜひ!テスで~と願っています!

ふるさとメンバー。

もえこ(瑠風輝)うまかったけれどちょっと薄味だったかも。

腹違いの弟。つまり庶子なわけで父や兄に対する複雑な思いを持つ悪とも善とも言いきれない難役。

同様の役、星組「ルミュゲ(鈴蘭)」のせおっち(瀬央ゆりあ)はこれよりも善の部分の描写が少ないにもかかわらず、せつなさを感じさせた最期の演技がとてもよかったっけ。

押し殺していた仮面の下からあれくらいの情念がほの見えたらこの物語がもっと深くなったはずなのだが。

正気を失った父に詰め寄る時にふと垣間見える愛憎、兄から奪った女性との対峙。

とても見応えのある深いシーンが連続する。

歌の表現は見事なのだから、それを演技に展開できればなぁ。がんばれー!

弟もえこより悪役度が高い叔父のわんたくん(希峰かなた)

「私があなたではないからだっ!」

ぐっときました。

その光の中にいるのは自分であったはずなのに...という思い。

悪役ではあっても観客の心にせつない感情を呼び起こさせる演技。

すげ~~~!

小役人のこってぃ(鷹翔千空)はこの物語の目撃者でもある。

実は舞台姿を認識したのは今回が初めて。

新人公演の映像などを見ると、ちょっと口跡に気になるところがあったように記憶しているのだけれど、この舞台ではそんなことはなかった。

語り手としても立派に役割を果たしていました。

気弱でヘタレな男だったけれど、ラスト、フランス革命前のパリへと旅立つ。

その姿にはまみちゃん(真琴つばさ)を思い起こさせるような華やかさを感じた。

いつも楽しみにしているベテラン、今回組長格のきゃのん(花音舞)の演技をほとんど観ることができなかったのはちょっと悲しかったけど、おそらくなにもかもが初めてづくしの若手達への演技指導など裏方に徹していたのではないかと想像しています。

その甲斐あってみんな下級生とは思えぬほど素晴らしかった!

これまで知らなかった若手をたくさん知ることができた舞台でした。

次回の宙組公演が楽しみだ!

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