「冬霞の巴里」 LIVE配信感想3 実力者たち

【2022-04-04】
LIVE配信感想

キャスト感想を引き続き。

オクターヴの母クロエ♪ゆりちゃん(紫門ゆりや)

初の女役だそうです。

とてもそんな風には思えない。

伏し目がちになったときの艶やかさにドキドキしました。

一見、無表情で心に鎧をまとったようなミステリアスな存在。

時折幻のように現れる少女♪ことくらちゃん(琴美くらら)がなにか深く関わっているとは思うのだけれど1幕ではずっと謎のままなのがなんとも不穏で…ざわざわする。

その少女イネスは2幕にクロエの娘であることが明かされます。

あぁぁぁ、そうだったのかぁ。辛い。

これまでほとんど心をあらわにしなかったクロエが堰を切ったように思いを吐き出す姿が切ない。

これは想像でしかないけれど彼女は死んだイネスに囚われるあまり、血の繋がらないオクターヴはもちろん実の娘のアンブルでさえ長い間心に留まらなくなっていたのかも。

残った子どもたちの存在が精神的に見えなくなり、きちんと愛を表現することが出来なくなることってあると思うのよ。

オクターヴとアンブルはインビジブル・チルドレンとして子供の頃からたった二人だけの世界にいたのかなぁ。

けれども単なる冷たい親というだけではない悲しい内面と秘められた愛情を表現できる手腕はさすが。

周りからやすやすと推し量ることができないその孤高の姿が色っぽくって、これだけ美しければ男はほっとかないわ。

オクターヴの叔父ギョーム♪つかさっち(飛龍つかさ)

で、ほっとかなかった人。

というかほっとけなかった人と言ったほうがいいかもしれない。

もちろん大人なので色々あります。裏の顔もあります。

でも、正しき道を行きたい。

愛するクロエをなんとしても守りたい。

そのために排除すべきものはいかなる手を使っても排除する。

そんな矛盾を抱えた複雑な大人の男。

垣間見える焦燥感がすごく魅力的だったわ。

ブノワ♪ゆかちゃん(峰果とわ)

二人よりも悪徳度高めなのがこの人。

まぁ~~~。上手い。

死に様もすごい。

ところで2幕はどこにいたのでしょう?

すっかり別の役、別の顔でどこかに紛れていたのでしょうか?

まさにカメレオン役者だわ。

オクターヴの父オーギュスト♪しいちゃん(和海 しょう)

歌は少なかったけれど、この役にしいちゃんを配したのって大勝利!

ただ立っているだけでも、その美しい能面のようなほほえみの後ろに絶対何かが隠されているって感じです。

次第に明らかになる理想の父親の裏の顔。

時折発せられるその艶々の美声がなんだか人間ではないようで…。いやまぁ幻影なんだけど。

しいちゃん、あなたは恐ろしいです。

ヴァランタン♪ほのかちゃん( 聖乃あすか)

なにぶん周りが芝居巧者だらけなので、演技力的には少し弱かったけれど、圧倒的美貌とぶちギレメイクで鮮烈な印象が残りました。

相棒のだいやくん(侑輝大弥)もどちらかといえば不器用なようなので、この二人の不安定さがヒリヒリとした雰囲気を醸し出すことにもなっていたわ。

これは配役の妙ね。

歌も格段に進歩してたし声もいい。

ただ、真ん中を行くタイプの人には演技力というよりむしろ正しく伝える力が必要だと思うのよ。

日本語は結論が最後にくる言語なので、その台詞の前半部分である程度文末が推測出来るように話さなければならないのよね。

たとえばほんのちょっとしたセリフ。

「まさか、○○○~」って続くセリフのニュアンスが想定外を強調する「まさか」なのか否定を推し量る「まさか」なのか、セリフの言いまわしによっては文脈が前後で一致しなくなっちゃう。

強調につながる「まさか」の言い方で否定に行ってはいけないの。

う~ん説明が難しいのですが。そしてちゃんと覚えてないので逆だったかもしれないのですがが。

とにかく、え?今のそっちの方向に行くセリフだったの?って思考がひっかかって芝居に入り込んでいたのが一瞬途切れちゃった。

もっとも思っていることと言っていることが必ずしも一致しないエキセントリックな人なので表現は難しかったと思うのです。

これだけの王道を歩いている人だからこんな些細なことはどーでもいいのだけれど。

でも演者たるもの日本語の感覚を磨いていくことはとても大切よ。

ジャコブ爺♪ヒロさん(一樹千尋)

演技もメイクもリアル飲んだくれですごかったわ。

現実でない者たちも混ざり合う世界なので、ヒロさんの醸し出すリアリズムってとても重要な要素だったと思う。

下宿の女将♪あおいさん(美風舞良)

明朗な声が大好き。

薄汚れた裏町の下宿屋の女将のたくましさ。

リアルではあるけれど程よくチャーミングで舞台が生き生きとします。

下宿の住人たち

みんな上手かったなぁ。

まいこつ(紅羽真希)が芝居巧者なのは知っていたけれど、ことねぇ(朝葉ことの)も実力者なのね。

そして大好きなダンサーりんちゃん(凛乃しづか)もしっかりした芝居なので驚いた。

座長♪じゅんじゅん(高峰潤)

しばらくの間キョンちゃん(航琉ひびき)だとばっかり思ってたわ。

歌も芝居も上手い~。

こんな素晴らしい人がいたのね。

本公演でも、もっともっと活躍の場を与えてほしい。

長くなってきちゃったので若手についてはまた次に書きます。

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