LIVE配信感想
初演の「マノン」はスカステで、月組「舞音」は劇場で見ています。
主要な登場人物ほぼ全てがダメ人間ということは絶対私好みの作品なはず。
とはいえ「舞音」のほうはなぜだか胸に刺さらなかったのよね〜。
さて今回はどうかしら?
ロドリゴ♪あいちゃん(愛月ひかる)
出会ってその日に駆け落ち?などと疑問に思うなかれ。
だってそれが運命の恋なんだもん。
それでもあえて理由を問うならば、あいちゃん演じるロドリゴは貴族の次男坊。
家を継ぐことは出来ないので聖職者になるべく神学校に行ってたってことよね。
そこに修道院に入れられるのを嫌って逃げてきた奔放な美少女マノンが飛び込んできたわけで。
で、その美少女助けちゃったわけで。
これはもう吊橋効果なんて生易しいもんじゃない。
まさにこれは運命の出会い。
聖職者として生きるこれからの人生?
それって本当に自分が望んだことなの?
んなもんどーでもよくなるわ。
神様なんかクソ喰らえ。
だったんじゃないかな〜と妄想。
でもこの物語の原作書いた人、聖職者だそうで〜。どゆこと?
読んだことないので舞台と同じなのか違うのかは知らないのだけれど、その不幸な結末は神様にそむいた因果応報だなんていうつまんない教訓話ではないと信じたい。
あいちゃんはアダルト味をちょっぴり抑えて若々しく瑞々しく演じていました。
だけどもちろんこの恋がピュアな若者のゆめゆめしいロマンスで終わらないところがすごく良い。
マノンへの愛と嫉妬で苦悩するあいちゃん。
くぅー、たまりません!
やっぱり堕ちていく男には色気がなくっちゃ!
よく考えればかなりのストーカー気質のロドリゴですが、あいちゃんのちょっと独特な甘え声であんなふうに執着されたら、もう身体が溶けるようだわ。
マノン♪くらっち(有紗瞳)
ヤバい美少女なんだけどヤバく見えないところが最高にヤバい。
これまで数々の情念の女を演じてきているくらっちなのに、また違うアプローチで演じていて本当にびっくりする。
どんだけ引き出しがあるんだろう。
ファム・ファタル。
悪女の代名詞みたいに言われるマノンだけど、くらっちのマノンはいわゆる悪女ではなかった。
ただ無邪気に愛とお金が必要なだけ。
そりゃぁ当たり前だわ。
私だってどっちも欲しい!
ちまちま働いてちまちま稼ぐくらいしか能がないからそうしてるだけで、己の美貌で愛とお金が手に入るのならそうしてるわい。
そしてお金がないというのは死ぬほど恐ろしいことだよ。
お金がなくてどうしようって恐怖に慄くくらっちの演技がめちゃくちゃリアリティあって震えました。
これはもう、まともな労働の対価なんて待ってられない!
今日手に入る賭博の金が喉から手が出るほど欲しい!
まぁ大体、賭博は損する確率のほうが高いのですが。
そんな正常な判断なんて出来ないところまでロドリゴを追い込んでしまうマノン。
でも彼女には悪意も他意もない。
なんだかっとてもピュアな女性なんじゃないかと思えてくる。
男達からプレゼントされた華やかなドレス姿ももちろん綺麗だったけれど、一番美しかったのは質素な囚人服の時だった。
あいちゃんに抱かれて死ぬところなんて内側から透き通るような崇高さだったわ。
ミゲル♪あかさん(綺城ひか理)
ベンヴォーリオに引き続き、またしても報われぬ友情の男。
ミゲルはすごく正しい。そして優しい。
身も心も清潔な修道士姿はあったかもしれないロドリゴの姿でもあります。
落ち着いた佇まいのあかさんはどこか不幸顔な気がした。
ロドリゴから見たら神と共にいるミゲルはぜんぜん幸福とは思えないんだろうなぁ。
マノンと堕ちる不幸の方が彼にとっては幸せなのね。
正直、あかさんにはもっともっと活躍して欲しいし、もっともっと男っぷりを堪能できる役をして欲しいとは思いました。
でもこのあまりしどころのない役で友情の温かみとそれが一切届かない無常が印象深く心に残るのはさすがのスターパワーだわぁと思ったわ。
レスコー♪かのんちゃん(天飛華音)
私にとってレスコーは完全にらんとむさん(蘭寿とむ)でインプットされているのです。
かのんちゃんはどことなく若き日のらんとむさんに似ているものだから色々思い出しちゃった。
らんとむさんのレスコーって中身はタカリ体質のヤクザもんのくせして明朗快活。
倫理観ゼロなのにあの屈託の無い笑顔を見るとなんだか憎めなくってほんと困っちゃったよなぁ。大好き。
かのんちゃんのほうが、ストレートにヤバい男だったかも。
なかなかニヒルで苦み走った青年。
あいちゃんより随分下級生なのにそれをあまり感じさせない迫力ある男っぷりはすごいわぁ。
そしてレスコー最大の見せ場は蜂の巣最期。
カメラさん。もうちっとアップで映してくれーー!
弾切れになってもうあとは撃たれて死ぬしかないって時に見せる表情が見たかったんだよ!
らんとむさんの人を食ったようなおどけた表情の中にふとのぞく男気が好きだった。
かのんちゃんはどんな表情を見せたんだろう。
あー劇場で観ることが出来たらなー。
イケおじ♪レオさん(輝咲玲央)とカブちゃん(朝水りょう)
マノンに言い寄る二人。
花瓶いっぱいの薔薇?を贈ってご機嫌なレオさんにまんざらでもなさそうなマノン。
うん、レオさんってあんなに迫力あるイケおじなのになんとも言えない愛嬌がある。
一方カブちゃんはカミソリのような色気。絶対敵にまわしちゃいけない男。
よりによってこの人をコケにしてしまうとは!
艶やかなイケおじが大好きなのでとっても満足でございます。
愛に正義なんていらないのさ!
今時の清潔を尊び人格の欠如を許さない世の中で共感を呼ばない主人公であることはわからなくもないです。
でもパーフェクトな人間なんてこの世にいる?
いたら逆に怖いわ。
だからこの話なんだか好きなんだよねー。
物語なんだもん。アンモラル上等!
ここまで突き詰めればもうあっぱれ。
二人がひたと抱き合う姿はひたすら美しく、最後には不思議な多幸感に包まれてしまった。
これぞ宝塚マジックじゃない?
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