不協和音の世界で「王家に捧ぐ歌」LIVE配信感想

【2022-03-02】
LIVE配信感想

御園座「王家に捧ぐ歌」LIVE配信を視聴。

公演前には色々と話題になった白い衣装ですが映像で見る限りは全然違和感ありませんでした。

というか、もともと抽象的な装置などが好きなので、こういう敢えてそのものズバリではない衣装がむしろ好みだったかも。

途中からことちゃん(礼真琴)の背中に謎の刺繍があったのには少しびっくりしたけれど、なんかすぐに慣れちゃいました。

ちょろい客です。

ただ、こんなラダメス見たこと無いよ!と思ったのはその衣装ではなく、ことちゃんの醸し出すムードでした。

ラダメス♪ことちゃん(礼真琴)&アイーダ♪なこちゃん(舞空瞳)

最初の戦闘が終わり、平和でエジプトが浮かれているときに現れたラダメス♪ことちゃんの雰囲気。

親友のぴーすけ(天華えま)、かのん(天飛華音)と三人でいるときも、アイーダ♪なこちゃんを呼び止めたときも

えっ?死相が出てる?

って思えてびっくりした。

なんでそんなふうに感じたんだろう。

メイクのせいかな?
髪の色も薄く、リップの色も薄く、衣装も白いから?

そして死相が出たまま、まるで熱に浮かされたようにアイーダに愛を説くラダメス。

アイーダは当初「あなたがファラオになればいい」とド正論で自分の心を押し留めていましたが(そりゃそうだろ。よく考えれば国を背負う将軍としては言ってることめちゃくちゃだよ)ついにはラダメスへの思いを解き放ってその胸に飛び込みます。

そこからのアイーダの力強さが凄かったわ。

なこちゃん生命力強いわ!

それまで押し殺していた生きるエネルギーが大地からアイーダの中に一気に満ち溢れてくる感じ。

でもそれに反比例して、ラダメスの死相がどんどん濃くなっていくんだよね。

なんなんだろう、この二人の噛み合わなさ。

いや、フィナーレのダンスのコンビネーションなんかはバッチリなのよ。

あくまでラダメスとアイーダとしての齟齬ね。

熱愛なのに全然ロマンチックではない。

まるで不協和音のような愛。

まあくん(朝夏まなと)みりおん(実咲凜音)がロマンチック過ぎたのかなぁ?宙組がむしろ異色だったのかも。

でも、ことちゃんラダメスとなこちゃんアイーダのこの噛み合わなさって、今回なんか妙にしっくりきたんですよね。

所詮、人はわかりあえないし、戦いはなくならない。

世界はまるで不協和音だ。

そしてその不協和音の世界観の中、圧倒的スケールの素晴らしい楽曲が鳴り響く。

ことちゃんから溢れ出る見事な音楽。

いやぁ、なんか凄かったな。

凄いもの見た。

配信見れてよかった。

アムネリス♪くらっち(有沙瞳)

今回、ラダメス&アイーダにはいい意味で感情移入出来なかったんだけれど、その代わりアムネリス様にどっぷりハマって見てしまいました。

くらっちのアムネリスはその予想通りに素晴らしかった。

王家のプライド。聡明さ。

強い将軍と結婚しなければならないという宿命以上にラダメスを真に愛しているという女心。

そしてそれを自ら捨て去らなければならない苦しみ。

とにかくその心情の流れに心地よく乗れていけて、最後にはエグエグ泣かされました。

見事だったわ~。

衣装も美しく、どことなくオリエンタルな雰囲気も感じられて、くらっちのトゥーランドットが見てみたいなぁ!なんて妄想が広がりました。

エジプトチーム

ぴーすけ(天華えま)は戦士というには繊細。

でも今回の王家においては、その繊細さがとてもあっていました。

この物語に終末感が加わったような気がします。

ぴーすけをみてるとなんとなく昭和のジェンヌさん思い出すんだよね。

いーちゃん(寿ひずる)とかキケさん(山城はるか)とか、そのあたりの綺麗な男役さん。

シリアスな芝居での色悪とか見てみたいんだけど。

次の星組の演目ではぴーすけの良さを引き出せそうな感じじゃないんだよなぁ。

まりんさん(悠真倫)のファラオの歌にチャルさん(箙かおる)っぽい力強さと響きがあって、これまでのまりんさんと少し違う気がしました。

専科になっても貪欲にいろんなものを取り入れて進化しているのが凄いわ。

神官3人組みっきー(天寿光希)、カブちゃん(朝水りょう)、はると(遥斗勇帆)はかなりいかがわしい感じで良かったです。だいぶエロいな。

3人で歌っていてもはるとくんの声がよ~く聞こえました。さすが。

エチオピアチーム

冒頭、かりんちゃん(極美慎)が暗闇に浮かび上がった時、なんでかわからないけれど、ぐっときて涙ぐんでしまった。

不思議だ~。まだお話は始まってないのに。

なんか、ウバルドの痛みと苦しみが伝わってきたんだよね。

2幕の自死も辛かった。

テロなんて絶対許されない。

だけどそれぞれには止むに止まれぬ思いと人生が有り、そしてその行為を最善と思い込ませた人間達がいたんだろうな。なんてふと思ったよ。

不思議な子だね。かりんちゃんって。

ロックテイストな衣装も似合っていてかっこよかった。

かっこいいといえば、アモナスロのれおさん(輝咲玲央)が最高にかっこよかった。

帽子のつばを指先でツツーなんてね。

どうしたんだ。なんで鳩ちゃんパパがこんなにイケオジなんだ?
と思ったら、娘と息子がなこちゃんとかりんちゃんであった。

納得するしかない。

芝居も歌も見事だし、助演男優賞あげられるものならあげたいわ。

そして、やっぱヒーロー(ひろ香祐)は最高です。

あの力強さ、安定感、かっこよさ。

素晴らしい!好きです!

名曲・迷曲等しく好き

なんにしても、王家の音楽全部好きだわ。

名曲も、迷曲も全部いい!

因みに迷曲部門では初演のスゴツヨが狂気で最高で大好きなんだけれど、あれはもはや再現不可能なので~。

エジプト盆踊りが一番好きです!

すみません。正式の題名がわからない。

「みんなみんな」とか「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」って踊るやつ。

いいですよね。あの浮かれソング。

調子よくってハイになれる。
所詮私は愚かな民衆です。

名曲部門では
「戦いは新たな戦いを生むだけ~」っていうアイーダの歌。

これはまあやちゃん(真彩希帆)のCDにも収録されていたから鬼リピートして歌詞も覚えているので終演後には頭から離れずにお風呂でず~っと歌っちゃいました。

なこちゃんの歌唱も素晴らしかったわ。

この調子でもし1ヶ月歌ったら喉を痛めちゃうんじゃないかっていうくらい力任せではあったけれど、それだけ悲壮感と強さが感じられた。

ラストのロングトーンも見事でした。

もちろん、「ナイルの流れのように」も「世界に求む」も壮大で大好き。

因みに「世界に求む」では同主調平行調と平行調同主調の転調が交互にあるとTwitterで教えていただき、そんなところも注意深く聞いてみました。

まぁ楽典にはまるで詳しくないし聞き取る耳もポンコツなので、実のところよく理解はしていないのですが、ここが転調なんだ~って思いながら聞くと面白かった。

名曲にはいろいろな秘密があるのね。

よくわからなくてもやっぱりこの楽曲、この作品は素晴らしいです!

この時代、この瞬間に上演出来て本当に良かった。

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