何も語らず包み込む「Icarus」

【2016-01-16】
スカステ視聴記録

このところ、スカステでは演出家のデビュー作品を特集してくれている。

知らない演出家さんだらけとなった出戻りの身としては大変ありがたい企画です。

景子先生デビュー作
「Icarus―追憶の薔薇を求めて―」 CS鑑賞。

とうこちゃん(安蘭けい)はどことなく星の王子さまを思わせる白い役柄。

一幕はエピソードがとりとめもなく紡がれていて話がつながっているような、つながらないような。

タイトルがバウ・ポエジーというだけあって詩がポツポツと語られるような構成。

もともと詩はあまり好きなたちではないし、この年令になると、こんなポエムなお話はちょっとなぁ~。

なんて思ってたら二幕で話の構造が見えてくると俄然面白くなってきました。

筆を折った新進小説家のかしげ(貴城けい)が過去で、その後の姿がこの舞台の語り手であり小説家でもあるケロさん(汐美真帆)。

なんだけれど本当の自分の過去のことが描かれているわけではなくケロさんの書く小説の中のフィクションのようでもある。

とうこちゃんは飛行機で行方不明になったパイロット。

この小説の世界に現れた彼の魂のようでもあるけど、そうではなくて逆にそのパイロットが死の瞬間に見た夢が描かれていたのだ。というようでもある。

と、かなりファジーな内容。全然あらすじの説明になってないな~。

寄る年波に勝てず脳みその動きも悪くなっているからこんなに話がファジーだと観終わった後、どんな話だったかな~ってなってしまうのですが…。

とにかくラストシーンが温かく美しいのでもうそれだけで、なんだか良い物を見たわ~って気になる。

とにかくケロさんよ。
ひたすらケロさんの包容力に癒される。

階段に腰掛けただんちゃん(檀れい)をそっと後ろから包み込む温かさ。大きさ。

言葉はないけれど、この芝居全体を優しく包み込んでくれる。

もうそれだけでいいです。

説明も何もいらない。何も語る必要はないわ。

こういう行間が感じられる舞台って少ないものね。

最近語られすぎる脚本が多くなっている気がするわ。

しかし、デビュー作にこうゆう作品をぶつけてくるとは!

景子先生、実はすごい野心家なのかもしれない。

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