愛はどうすればはかれるのだろう「舞音-MANONー」新人公演

【2017-04-30】
スカステ視聴記録

もちろん、たとえどんなに後ろの席であろうと、生の舞台を観るほうがいいに決まっています。

だから、舞台で観た作品はスカイステージではあまり見ないのですが…

確認したいことがあったり、思い出に浸りたくなったりした時に放送を見ることがあります。

今回は確認したいことがあったので本公演を、そして生で観ることがかなわない新人公演も合わせて見ることにしました。

確認したかったのは、ダメ男好きのこの私が、まさお(龍真咲)演じるシャルルという男にまったく感情移入ができなかったのが不思議でしょうがなかったから、その理由を探るため。

もう一度見たらまた違う感情が芽生えるかなぁ。と淡い期待で見たのですが、ダメでした。

う~~~ん。なんでなの~~~?堕ちていく男って大好きなのに~~~。

で、アタリマエのことなのだけれど、生の舞台のほうがいいに決まっているのだ。

特にこの「舞音」の良さは、装置と人物の織りなす構図の美しさ。

装置は松井るみさん。

演出は植田景子先生。

あの羽根のセットが印象的な「愛と革命の詩」もこのコンビでしたね。

景子先生の作る構図っていつも立体的で美しいなぁ。と思う。

特に2階から観ると人とセットの織りなす構図や光と影の具合がきれいです。

SS席や1階Sの前方席にめったに座れない私のような2階の住人にとって大変ありがたい演出家さん。

でもテレビだと残念ながらその立体感や美しさが伝わらない。

そしてこの「舞音」ではもうひとりのシャルルという存在があるのだ。

みやちゃん(美弥るりか)が、それはそれは、儚く美しく、夢のようにフワフワと演じていたもうひとりのシャルル。

この存在によって、私はかろうじてシャルルという人間を見捨てず最後までなんとか観ることができたんだよね。

ところがテレビ視聴だと、これがダメなの。

みやちゃんに罪はありません。

2階から観た幻のような存在のシャルルがテレビだとくっきりはっきりアップで映されるから。

あらまー実体になっちゃダメなのよ~~。

SS席で観ている方は、何時もこんな感じなのかしら。

羨ましいと思う良席も、この芝居に関しては損な席かもしれませぬ。

で、あーさ(朝美絢)主演の新人公演をスカーステージにて見てみました。

もう一人のシャルルは最近気になる男役うーちゃん(英かおと)。

みやちゃんよりも男としての実体感があるうーちゃんにこの役は難しかったかな。

人間同士のやり取りがあるうーちゃんの芝居を見たかった。

れんこんさん(蓮つかさ)は説得力のあるしっかりした演技。

素晴らしい!

この人の支えがあるからこそ、あーさ演じるシャルルの危なっかしい行動が際立つ。

さて、あーさシャルル。もちろんダメ人間に変わりはありません。

でも、新人公演というのは、技術的にも、華やかさも、もちろん本役さんにはかなわないけれど、それゆえにトップスターの持つスターオーラだとかケレン味だとか、そんないろんなものが省かれシンプルになったことで、物語の持つ本質が見えてくるものなのね。

なぜ、シャルルは堕ちていくのか。

それは、どうすれば愛を計れるのかということだと思う。

だいたい、私くらいの顔も性格もこれと言っていいところがない人間が「愛している」なんて言われようものならば、こんな私にそんなことを言ってくれるなんて~~と、すぐに信じてしまうでしょう。

でも、舞音ほどの美貌の持ち主なら、どうなるでしょう?

いやぁ考えたこともなかったけど。

そりゃあきっと、挨拶でもするように「愛している」と言われ続けるんだろうな。

だとしたら、どうやってその言葉が真実であると判断すればいいのでしょうね。

きっと愛の言葉をただ言うだけでは、信じられないのかもしれないなぁ。

やっぱりお金を使うかどうかって判断基準になるのかしら?

もうまったく想像が付かない。

もしも美しい男が自分のために身を滅ぼしてくれたら、それはきっと本物の愛であると思うのかもしれません。

舞音を演じた、とき(叶羽時)には、そんな愛を計りかねて迷子になったような、放っておけなさがあって素晴らしかった。

本公演ではたぶんそのトップスターオーラゆえに、どんなに境遇になっても口八丁手八丁で生きていけそうなまさおシャルル。

堕ちていくのというのに空気がカラリとするような雰囲気があって、なんだか気持ちが乗れなかったのだわ。

で私の興味はシャルルから離れて革命軍がどうなるのかに移ってしまった。

すーさん(憧花ゆりの)や、としちゃん(宇月颯)はカッコイイし、若手ホープてんこ盛りの革命家を観るのは楽しかった。

でも新人公演を見て、この芝居に革命の話は全く必要がなかったのだということに今更ながら気が付きました。

もちろん演じていた人達には罪はありません。

物語として必要がない設定なのですから、これはどうしようもない。

新人公演では余計なものが削ぎ落とされ、あーさシャルルはただ愛するがゆえに純粋にひたすら堕ちていく。

フランス領インドシナ(ベトナム)の暑く湿り気を帯びた空気の中、じっとりと絡め取られるように堕ちていくあーさの演技にただ心震えた。

それだけで良かったのね。この話って。

本公演観劇の記事はこちらです。好きなダメ男をリストアップ。

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