観劇感想
きわちゃん(朝月希和)が好きだ~~~!
「MY HERO」のクロエ以来ずっと好きな娘役さんだけれど、この演目でやっぱり大好き!と改めて思いました。
演技力の高い娘役さんが好きなんです。
その物語の世界にすっと誘ってくれて、彼女が演じている女性はもちろん周りの人々の想いまでもを観ている側に響かせてくれる。
きわちゃんはそういう稀有な娘役さんだと思います。
玲玲という役はたしかに豪華な衣装は着てないし、主演コンビの情熱的なラブロマンスもないです。
けれども、この役が卒業公演にふさわしくないかといったら、まったくそんなことはない!
むしろきわちゃんの持つスキル、感性、全てをかたむけて玲玲の人生を少女時代から大人まで演じきることができる、まさに集大成と言える素晴らしい役だと感じました。
下級生のときには何度か演じたことのあるとはいえトップ娘役が子役まで演じるのは稀ですよね。
だけど少女時代の造形からとにかく素晴らしいのよ。
最初の登場は極貧ではあっても、お兄ちゃんについていけば大丈夫って思ってるまだあどけない少女から。
もちろん大人が演じる子役ではあるけれど、そこに全く不自然さもあざとさもないのが本当にすごい。
メイクも巧いんだろうなぁ。こぼれ落ちそうな目が顔の真ん中より下の位置にあるように見える。それってまさに子供の顔のバランスです。
それから姿勢もちょっと変えてるよね。ほんのすこーしお腹が出ているように見えて、まるで中島潔さんが描く少女のようです。
次に登場するのはおそらく最初から1、2年後くらいなのかな?「ふわり、ふわり」の歌。
思わず心の中で「ユディット~~~!!」って叫んじゃった。
きわちゃんを初めて知った花組「愛と革命の詩」の孤児ユディットにも一人ぼっちを歌う悲しいソロ曲がありました。
あれからもう10年近く経っているのに、今も変わらず愛らしく、そして歌声はさらにピュアで思わず抱きしめてしまいたくなるほどです。
文秀♪さきちゃん(彩風咲奈)との再会では立場が違うから自分の家に起きたことはもう言ってはいけない、我慢しなくちゃいけないって思うようになっているのよね。
だけど文秀の変わらぬ温かさに思わず言葉がこぼれ出てしまう。
千穐楽のLIVE配信では白太太♪いっちゃん(京三紗)の優しい嘘を知って静かにポロリと涙を流す姿が捉えられていました。子供ながらにもういろんなことが理解できるようになっているのよ。
描かれていない間に起こった苦難によって幼い子供のままではいられなくなった玲玲を繊細に表現できるきわちゃんの演技力。すごい!
文秀に手を引かれて、赤い大地を歩いて行く後ろ姿に涙が溢れました。
ここ、屈指の名シーンだと思う。
荒涼としたふるさとの広い大地の中でたった二人ぼっちだけどそこには繋がれた手のぬくもりを感じます。
その時から玲玲にとって文秀は世界の全てになったんだろうなぁ。
次の登場シーンは文秀の家で譚嗣同♪すわっち(諏訪さき)と初めて出会うところ。
すっかり身なりを整えて、そしてもう子供ではないのだけれど、ちょっとした動作、濡れてしまった服を拭うところとか裁縫道具を取りに家に駆け込む後ろ姿にまだ大人になりきれていないあどけなさがにじみ出ます。
だから譚嗣同くんが玲玲を文秀の奥さんと勘違いするのが、いやいやいや、いくらなんでも奥さんには見えないだろうって微笑ましく思っちゃうの。
彼がまったく女性慣れしていないことがよく現れている。その純情素朴なキャラを導き出しているのはすわっちであり、同時にきわちゃんでもあると思います。
2幕の市場のシーンでは譚嗣同と共に下手花道から出てきた玲玲の雰囲気にハッとしました。
物腰も表情もはんなりと柔らかくて、すっかりしとやかな大人になっている!
1幕から数年以上の時が経っているのかな。文秀の帽子の玉の色も変わってきているものね。
忙しい文秀が少しでも心地よく暮らせるようにと、ただそれだけを考えて家でひたむきに働いてきた玲玲。
尽くしても尽くしてもけっして見返りなど求めなかった、求めることすら考えなかった玲玲の心に譚嗣同の突然のプロポーズというさざなみが広がります。
びっくりして思わず断るような言い方になってしまったけれど、譚嗣同も無償の愛の人なんだよね。玲玲と同じなんだわ。
「いいんです。いいんですよ。」
玲玲が買った食料を物乞いをする安徳海にあげてしまって謝る譚嗣同に語りかける言葉のまろやかさ。
きわちゃんの情感に溢れた声が大好きだ!
少女から大人になり、だけど自分でもまだわかっていなかった胸の中の文秀への淡い想い。
そしてどこかしら心が共鳴し合うような優しい譚嗣同に想いを寄せられる安らぎ。
愛を知り始めた玲玲はとてもとても美しい!
改革が失敗に終わり窮地に立たされた文秀を心配して迎えに来たシーンがすごく好きです。
文秀にいつも手を引いてもらっていた玲玲がこんどは自らの手の平でそっと文秀の手を包む。
そのさりげない姿に彼女の成長と心の自立を感じました。
玲玲にとって文秀はずっと世界の全てだったけれど、文秀にとって玲玲の存在はどんなものであったんだろう。
彼にとって優先順位の第一は皇帝でありそして中国の民であり、だから時には玲玲の存在すら忘れるくらいの日々を過ごしてきたんじゃないかと思うのです。
それでも文秀の心の一番奥には玲玲がいるんだわ。
二人の優しい抱擁には恋人よりも家族よりも深い深い愛を感じます。
それってラブロマンスよりもラブロマンスじゃん!
そして譚嗣同の処刑。
ここ、舞台演出上のお約束で玲玲は処刑台のほうを見ているわけではないんですが、客席を見つめるその瞳の先にはしっかり譚嗣同がいる。
「私ここにいますから。ずっとあなたのそばにいますから。」という呼びかけに涙腺が決壊しました。
女性が何かを出来るわけでもない時代、貧しくても辛くても、ただ目の前にある大切なものを懸命に愛し続け、支え続けようとする玲玲の芯の強さ。
あの小さかった少女がいろんな想いを抱えながら成長し、こんなにまっすぐ自分の想いを伝えられるまでに!もう涙涙です。
ラストシーンは船の上。文秀とともに洋装に身を包んだきわちゃんはキラキラと輝いて見えました。
昔、赤い大地の中、文秀に手を引かれて故郷を後にした小さな玲玲がこんなにも美しくそして強くもなってまた新たな道へ旅立とうとしているのね。
生まれた地を離れ見知らぬ国へと旅立つ不安からか、ふと子供の頃に戻ったような表情を見せるのがまたとても素晴らしいのよ。
人というものは誰しもけっして一元的ではなくて、様々な感情、時として矛盾するような想いさえ抱いて生きていくもの。
不安だけど、辛いけれど、けっして泣かない。でも今日だけは涙が溢れる。そんなゆらぎを表現できるきわちゃんの姿に感動しました。
時代に翻弄される言ってみれば名もなき女性の物語をあますところなく繊細に演じきったきわちゃん。なんて素敵な役者さんだろう!
玲玲はサヨナラにふさわしい素晴らしい役だよ!
大千穐楽LIVE配信ではサヨナラショーで歌い踊るきわちゃんも堪能しました。
なかでも大階段で娘役さんを率いてのル・ポアゾンが嬉しかった!
かっこいい!
かっこいいきわちゃんも大好きだ!
かっこいいと言えば「FIRE FEVER」のオープニングもありましたね。
タカラヅカニュースでのさよならインタビューでもお話していたシャンプしながらキックする力強いダンス。
隣で踊るのが同期のそらくん(和希そら)と、あの振付の時のオリジナルメンバーでもあるるいくん(眞ノ宮るい)なのがすごく嬉しかったわ。
そして「海の見える街」
さきちゃんとの出会いのダンスナンバー。
ツンとすましたきわちゃんもすごく好きだったな~。
ちょっぴりタレ目のお顔が愛らしいから、ツンと意地を張った表情がとってもチャーミングなのだ。
デュエットダンスはしなやかに身体にフィットした淡いグリーンのドレス。
裾がとても長いのね。美しいドレスさばきをみてると、あぁやっぱり花組育ちだなぁって思います。
ラストの100tハンマーからのさきちゃんのキスは多幸感に溢れて。
なんて素敵なサヨナラショーなんでしょう!
花組時代からずっと長く見てきた大好きな娘役さん。
紆余曲折あった宝塚人生にこんなにも幸せなハッピーエンドが待っていたなんて。
卒業はすごく寂しいけれど、たくさんの幸せをいただきました。
本当にありがとうございました!
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