「BONNIE & CLYDE」観劇感想4 印象に残った人たち

【2023-02-15】
観劇感想

いまだにボニクラに囚われております。

それだけ出演者の皆さんの観客を捉える力が素晴らしかったのでしょう。

観た直後は色んな感情がぐるぐる回るし胸はえぐられるしで大変でしたが、今思い返せばとっても楽しかった。

一人ひとりについてすべて言及していきたいけれど、なにぶんたった一度きりの観劇なので、まだ書いていなかった印象に残った人たちの事をまとめて最後に残しておきます。

冒頭のガールズが踊るところで、お顔がちっちゃくて背が高くて、ちょっとじゅりちゃん(天彩峰里)に雰囲気が似ている娘役さんに目を引かれました。

誰だろう?めっちゃかわいい!

その後、美容院のシーンにも登場です。

そこでの雰囲気はガールズの時より大人っぽく、最初は同一人物とは気が付かなかったんだけれど幕間にプログラムでチェックして判明。

みなみちゃん(愛空みなみ)105期生ですね。覚えたぞ!

そしてこの美容院の場面、楽しくて大好き。

愛する夫を案じる想いを語ってほしかったのに“亭主元気でムショがいい”(元ネタわかる人は中高年よ)になっちゃうのが最高です!

ともかちゃん(希良々うみ)がウェット感ゼロに歌い始めると場面があっという間にシットコムのように変化する。

「ザ・ルーシーショー」とか「奥様は魔女」とか子供の頃みてた懐かしいアメリカの30分コメディドラマみたい。

ともかちゃんの世界観の掴み方とそれを的確に表現できる力ってすごいわ。さすが!

すかさず「彼女は出禁だ」ってバックのセリフが入るのもシットコムっぽくて好き。

ありすちゃん(有栖妃華)のあっけらかんとした表情と明るい歌声もいかにもアメリカのホームコメディ。

みなみちゃんは歌のソロはなかったけれど、公演後半ではバド巡査♪るいくん(眞ノ宮るい)とのアドリブが始まったそう。

きっと生オケ復活でアドリブが入れられる隙間が生まれたのね。

私は前半の観劇だったので見られなかったのですが、毎日バド巡査のめげないナンパがTwitterにアップされていて読むのが楽しみでした。

千秋楽にはついにデートに漕ぎつけたようです。バドくんおめでとー!あ、でも二幕で…。うぅぅ切ない。

そしてボニクラのもう一つのカップルであるバック♪そらくん(和希そら)&ブランチ♪ひまりちゃん(野々花ひまり)がわかっちゃいたけど素晴らしかった!!!

そらくんはさぁ~~。

前半のネルシャツを腰に巻いたカジュアルな衣装の時は母性本能くすぐりまくるヤンチャさなんだけれど、後半のスーツにハットになった時の色気がとんでもないよね!

ハットからはみだした長めのえりあしが普段のショーなどではあまり見ないワイルドな色香を放っていてむちゃくちゃときめいてしまった。

あんなに胸キュンの少年の瞳を持っていたくせにセクシーだなんて反則よ!

もう狂うわよ。狂わされたわよ!

そんなとんでもない夫を持つ敬虔なクリスチャンのブランチ。

自分の価値観とまったく相容れない男なのにどうしようもなく愛してしまった。

理屈抜き、もはや本能レベルで溢れ出てくるブランチの狂おしさって下手をすれば観てて鬱陶しく感じられる可能性もある。とても難しい役だと思います。

けれど、ひまりちゃんの柔らかな演技力でブランチの哀しさが観客の胸にせまってくる。歌もすごく良かった。

叫ぶシーンも多いのだけれど、声をまったく潰さないのがさすがの技術です。

バックの最期のシーンではクライドに向かって絶叫した直後にとても円やかな声でバックに語りかけていて涙を誘ったわ。

バロウファミリーの両親も良かった。

裁判の場面で重い判決に困惑するママ♪ナナちゃん(沙羅アンナ)がリアルでした。

そうだよね。しっかり者のオッカサンだけどああいう時ってきっと何もかも理解不能になるよね。

パパ♪つばさくん(天月翼)の存在感薄めの表現も上手い!

汚い金とわかっていながらその金を受け取らなければ八方塞がりなんだ。もはや諦めと生活の疲れだけがゆらゆらと立ち上っている。

クライドの親孝行の方法って倫理的には間違ってるけれど、強盗以外に金が手に入る方法なんて彼には思いつかないわけで…ほんとツライわ。

人はどれほど貧しかろうが苦しかろうがとにかく生きていかなければならないのだもの。

そんな時心の支えとなるのが家族と、そして信仰なのかしら。

神に背いたボニー&クライドも信仰というものにまったく囚われてないか?っていったらそうではないと思う。

「どうして神様はこんな手間のかかることをするんだ」って確かクライドが言ってたよね。

神が人間に与えた人生は不条理ばかりだ。

というわけで牧師♪あすくん(久城あす)

あすくんのなにもかもがあらわになるような明瞭な声の響きはとても印象に残りました。

元々のブロードウェイ版の歌はゴスペルっぽい感じなのかしら?

でももしゴスペルだったら馴染みすぎだったかもしれません。

あすくんの歌はとても清らかで、それゆえにそこはかとなく胸に残る不条理感がありました。

もっとも、このモヤモヤは宗教が生活レベルには浸透していない日本人の私だから感じてしまったことなのかも。

神が何かをしてくれるわけでもない。いや何もしてくれないからこそ、人はただひたすら問いかけ、祈り、やがて死んでいくしかない。

それは古今東西どの宗教でも同じだとは思うのだけれど。やっぱりこの芝居の根底にはキリスト教、なおかつバプティスト派ならではの感覚があるのかな。

そういう言わずもがなの宗教感覚について汲み取る力も知識も自分にないのが海外ミュージカルを見るたびいつも残念に思うわ。わかるわかる。そうだよね!って思ってみたいな。

さて、神と法の名のもとに二人を裁こうとする人たちもいます。

特別捜査官フランク・ハマー♪おーじくん(桜路薫)、副捜査官ボブ・アルコーン♪めいちゃん(真友月れあ)、ミリアム・ファガーソン知事♪アトムちゃん(愛羽あやね)の3人がすっごい圧だった。

おーじくんの渋さは毎回楽しみで最早当然としても、アトムちゃんはまだ下級生、なのにこの迫力!

めいちゃんなんてテンガロンハットに髭面の粗野なおっさんで妙にツボにハマってしまった。面白いなぁ。

しかも葉巻をくわえたままで「ドタマぶち抜く」とか言ってたよね。

お楽しみはこれからだと言わんばかりの野卑な物言いに、いったいどっちがお尋ね者なんだか分かんなくなったわ。

悪と正義の心情的な逆転現象が起こるのが興味深い。

ボニーだけはなんとか助けたいと願っている幼なじみの保安官テッド♪さんちゃん(咲城けい)が二幕になると3日くらい寝てないんじゃないか?っていうくらい様子がおかしくなってくるのも良かった。

私が見た前半だと、さんちゃんの歌や芝居はまだ少し硬い感じがあったのよね。なにせ周りが芝居巧者だらけなので比べちゃったらそこは仕方がない。

けれどLIVE配信では会話のやり取りのそういうちょっとした噛み合わなさがうまい具合に作用して、ボニーにとってのコレジャナイ感とか後半の焦りと憔悴をリアルなものにしてた気がします。

この一ヶ月で得たことがたくさん有ったんじゃないかしら。

今後の成長に大いに期待!

同じ追う側でも捜査官グループと保安官グループとでは一枚岩ではないところも面白かったわ。

プログラムの大野先生解説によると保安官シュミッド♪りーしゃさん(透真かずき)は元々は自転車やバイクの販売店経営者、テッドは郵便局員だったとか。

なるほど、日本で言えば地元の消防団員の警察版みたいな身近な存在なのかも。

保安官は地元住民の選挙で選ばれバド巡査のような業務を補佐する人材は保安官が任命するんだそう。

となるとバド巡査の元の職業ってなんだったんだろう?

蝶ネクタイをクイクイってするのがお茶目だったからレストランのウェイターさんかな。ヘタレだけどきっと地元住人に愛されていたわよね。

エレノアちゃんとデートには行けたのかしら。ディナーはかつて自分が勤めていたレストランだったりして~と妄想が広がるわ。あぁ、あの日なんで一人で飛び込んじゃったのよぉぉ。

後任のジョンソン保安官補佐♪きっすい(希翠那音)はバドくんよりもかなり頭脳派です。きっすいくんって切れ者がよく似合う。

バックの子供時代も演じていました。目端の利く、はしっこい雰囲気がそらくんっぽくて上手かった。

自転車泥棒のシーンで大人に取り押さえられながら「逃げろクライド!走り抜けろ!」って叫んでるところの口跡も芝居もいい。

これはバックの最期にも繰り返されるクライドの生き様を表現するキーワードとなる大切なセリフです。

それを任せられるだけの力量を感じました。素晴らしかった!

りーしゃさんのシュミッド保安官は地元の信頼を得ているのも納得の厳しくも温厚な佇まいがさすがでした。

まさか撃たれてしまうとは思ってなかったのでびっくり!衝撃だったわ。

ここのアジトが捜査官たちに囲まれるシーンは単に銃撃バンバンのアクションを見せるのではなく、ストップモーションやピンスポットを使ったメリハリのある演出で構図がとても好きでした。

元々のブロードウェイ版の音楽も良いこともあるのでしょうが、宝塚版のキャストのハマり具合と演出の素晴らしさで本当に贅沢な観劇体験が出来ました。

早くBlu-rayがほしい!

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