作曲家・高橋城先生の訃報に寄せて

【2023-08-11】
思いつれづれ

作曲家の高橋城先生が6月にご逝去されていたことが7月27日の新聞で発表されました。

宝塚の舞台を彩る多彩な音楽を生み出すたくさんの素晴らしい作曲家の中でも特に好きだった高橋先生。

ご病気だったことは風の噂で聞いておりましたし「パーシャルタイムトラベル」以降は新作でお名前を見なくなり、とても心配しておりました。

来年の正塚先生の大劇場作品での復活を期待していたのですが、まさかお亡くなりになっていたとは…。

ショックです。ハリー&ジョーの新作がもう無いだなんて…。

正塚先生とのコンビ、通称ハリー&ジョーは90年代前半に宝塚にとっぷりハマっていた私にとって絶対的な存在だったんです。

私が初めて先生のお名前を意識したのはなつめさん(大浦みずき)主演のバウ公演「アンダーライン」だったでしょうか。正塚先生の第3作目でした。

スーツにタバコ。フィリップ・マーロウを思い起こさせるようなロサンゼルスが舞台のハードボイルド物。

ジャズ調の大人っぽい主題歌「レナードのテーマ」が印象的でした。

寂れた海辺でいつの日かきっと朝日は昇るとナタリー♪まさえちゃん(秋篠美帆)に歌いかける「ナタリー」も素敵だったな。

そして正塚先生の初大劇場作品「テンダー・グリーン」ですよ!

上演当時はなぜだか色々と批判もあった意欲作でしたが大好きで大感動した作品でした。

その主題歌が名曲「心の翼」です。

大劇場だけの上演で東上しなかった作品の主題歌が今に至るまでずっと大切に歌い継がれているというのはそれだけ歌に力があったということだと思います。

その後、4年間も待ち望んでいた正塚先生大劇場二作目が「ロマノフの宝石」

曲の担当は城先生と吉崎先生。

ラストに歌われる城先生作曲の「夜明け」は力強く美しい曲でした。

なつめさんが歌うバース(序奏)のところでバックに流れるメロディが次第に夜が明けていくことを感じさせるんですよね。

なんの楽器かな?シンセなのかしら。マリンバっぽい音です。すごく感動的なの。

曲の奥から聞こえてくるキラキラとした光を感じさせる音も美しくて心が洗われるよう。

まさに夜明け!メロディもアレンジも大好き!

それからハリー&ジョーといえば「ブラック・ジャック-危険な賭け-」も忘れられません。

主題歌の「かわらぬ思い」も名曲ですが、みきちゃん(真矢みき)、みはるちゃん(森奈みはる)、ヤンさん(安寿ミラ)が歌い継ぐ「それぞれの思い」という挿入歌がもう大・大・大好きでした!

舞台を観終わったあとに曲を思い出してなんとか歌おうと頑張りましたっけ。

若い時分はわりとすぐにメロディーを覚えられたので家に帰ってプログラムに載っていた歌詞を見ながら一生懸命歌ってみるのですが、どうしても歌詞が字余りになってしまって…。

あれれ~なんで~?メロディーは大体あってると思うのに何かが違うよ~って嘆いても音楽配信もない時代でどうにもならなかったのよね。

後々、高橋先生の作品集のCDが発売され「それぞれの思い」も収録されていました。挿入歌なのに選曲されているのがとても嬉しかった。このCDは宝物よ!

そしてようやくこの曲の出だしが5拍子であることに気が付いたのです。

リズム音痴だから舞台を数回観ただけでは全然わかってなかったわよ~。

道理でね。リズム無視のうろ覚えじゃぁ文字数が全然合わないわけですよ。

「それぞれの思い」は5拍子と6拍子の変拍子だったのだ。なんて難しいの!

あの楽曲から感じられる焦燥感や切迫感の秘密が少しわかったような気がしました。

本当に大好きな大好きな曲で、これまで歌われてきた全宝塚の曲の中でも私にとってはこの先もかわらずナンバーワンかもしれません。

今でも時々車で一人の時にみはるちゃんのパートだけですが熱唱しています。

歌ってみると娘役パートとは思えないほど力強さが必要でびっくりしますよ。腹筋鍛えられる~。

全身全霊をかけなければ歌えないくらい凄い曲です!

それから私は15年の観劇ブランクに入ってしまい、やっと出戻ってきて観ることが出来たハリー&ジョー作品が雪組「私立探偵ケイレブ・ハント」でした。

けれどもこれが大劇場公演での最後のコンビとなってしまったのですね。

もしもあの時お元気だったとしたらきっと全て城先生の曲だったに違いありません。しかしほとんどの曲は玉麻先生が担当されていました。

城先生が作曲された主題歌「探偵の矜持~ケイレブのテーマ~」は途中のさりげない転調がすっごくかっこよかった。

でもいつもだったら作曲だけでなくアレンジも御自身でされるはずなのに…。

編曲を手掛けたのはお嬢さんである高橋恵先生でした。

あれ?なんかいつもと違う?って思って編曲者をチェックしたのでよく覚えているのだ。

城先生のアレンジが大好きだった私はあの時少し残念に思ったものです。やっぱりどこかが決定的に違うのよ。

城先生のアレンジで好きなところは、裏メロディっていうのかしら?音楽用語がよくわからなくて説明が難しいのですが…。

歌のメロディと掛け合いをするように演奏される部分がものすごく心に残るのです。

掛け合いとなる裏メロ部分はもちろん歌ではなく演奏だけなのになんとなく言葉が感じられる。

時に何かを問いかけているような、時に励ますような…。歌詞は無いけれども楽器の音色がいつも語りかけてくれます。

歌えば力強く応えてくれるようなその裏メロディに何度痺れたことでしょう。

正塚先生の作品は主人公が人生に迷い、悩み、自問自答する。そんな物語が多いので城先生のアレンジによる音楽がぴったりマッチしてより一層の感動を呼ぶのです。

あぁ、私にとってハリー&ジョーはまさに青春のシンボルだったのよ。永遠なのよ。

城先生が携われた曲の数々をもっと詳しく知りたくてJASRACで検索してみたところ1392曲の登録がありました。

ショーで使われる既成曲のアレンジなどは登録されてないので、実際のお仕事はこの何十倍以上もあると思います。

そして観始めたばかり頃に印象に残っていた曲も実は城先生の作品だったことを今頃になって知りました。

宝塚にハマるきっかけとなった草野旦先生のショー「オペラ・トロピカル」の「トロピカル・ナイト」

エッコさん(潮あかり)とカミコさん(美野真奈)の妖しく美しいデュエットからミッキーさん(順みつき)のエルクンバンチェロへと至る大曲で血が沸騰するほど熱かった。

カミコさんは大人っぽくチャーミングな娘役さんで芝居もダンスもうまく、そして素晴らしいジャズシンガー。退団後には城先生とご結婚されました。

同じく草野旦先生のショー「ハッピーエンド物語」でカリンチョ(杜けあき)、まさこさん(草笛雅子)、とんちゃん(毬谷友子)が歌った「秋の詩」も城先生作曲だったのですね。

こちらは一転してちょっぴりもの悲しい旋律の優しく温かな曲です。

大好きで当時耳コピしてずっと歌ってましたっけ。たぶん今でも歌える!

観劇ブランク中で観ることは出来ませんでしたが荻田浩一先生や大野拓史先生ともよく組んでらしたようです。

「ロマンチカ宝塚'04」の主題歌や「夢の浮橋」などなど、スカステで見てすっごい好き!って思ってた曲の数々は城先生だったんだ。

三木章雄先生のジャズショーはもちろん、藤井大介先生とはデビュー作の「Non-Stop!!」から関わっていらしたみたい。

ずらりと並んだリストを眺めると、あれも、これも!大好きだったあの曲も!

芝居の主題歌、挿入歌にBGM、そしてショーに至るまでこんなにも多くの曲を残された城先生。

素晴らしい曲の数々を本当にありがとうございました。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

高橋城メロディーをずっとずっと愛し続けます!

コメント